中東を読み解く

2017年7月19日

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 サウジアラビアやエジプトなどアラブ4カ国が同じスンニ派のペルシャ湾岸の小国カタールと断交し、経済封鎖などで孤立化を図ったが、この締め付け策は失敗することが確定的になってきた。カタールが地域大国、トルコとイランとの関係を強め、国家的危機に巧みに対処しているのに対し、仕掛けたサウジ側には打つ手がないからだ。

カタール・ドーハ(SHansche/IStock)

カタールのしぶとさはサウジの誤算

 カタールは人口230万人の小国。世界3位の天然ガス埋蔵量をバックに潤沢な経済力を誇るが、食料はほぼ100%輸入に依存せざるをえない。その多くを隣国のサウジアラビアからの陸上輸入に依存していたが、断交で国境が封鎖されてあっという間に食料危機に陥った。

 しかし、スーパーマーケットや商店などからサウジ産の野菜や果物が消えた代わりに、イランやトルコなどからの輸入品がその穴を埋めた。値段は1割~2割上がったものの、すぐに音を上げるというサウジの期待を裏切ってしぶとさを発揮、食料などの封鎖は奏功していない。

 サウジ、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、エジプトの4カ国は6月下旬、関係修復の条件としてカタールに対し、13項目にわたる要求を突き付けた。13項目には、イランとの関係縮小、トルコ軍の基地閉鎖、イスラム原理主義組織ムスリム同胞団などとの関係断絶、テレビ局アルジャジーラの閉鎖などが含まれ、まるで「属国に対する命令」(アナリスト)だった。

 カタールはこれに強く反発、アルジャジーラの閉鎖については、英国にBBCの閉鎖を要求するようなものと批判した。カタールには19世紀から政治的な被抑圧者などを保護してきた特異な歴史があり、外部からの批判には打たれ強い体質が備わっていた。このしぶとさはサウジの誤算だった。

 近年でもイラクの独裁者サダム・フセインの家族や、国際テロ組織アルカイダの指導者だったビンラディンの息子の1人、パレスチナの原理主義組織ハマスの指導者を保護し、アフガニスタンの過激派タリバンのメンバー、家族ら100人を滞在させ、和平交渉の場所を提供してきた。

 カタール側の怒りを増幅させているのが「サウジやUAEにはめられた」(ベイルート筋)ことに対する確信があるからだ。これについては7月16日付の米ワシントン・ポストが情報当局者の話として、UAE高官らが5月23日にカタールに対するハッカー攻撃を密議。同24日にカタール国営通信のウェブサイトにカタールのタミム首長の「親イラン発言」などをでっち上げて掲載させたことを暴露している。

 ハッキングはUAE当局が自ら実行したのか、ロシア人ハッカーなど外部のプロに委託して実行したのかは不明だ。しかし、この首長のでっち上げ発言が時を置かず、“真実の報道”としてサウジアラビアのメディアで大々的に伝えられたことを見ると、カタールを貶める策謀は周到に準備されていたのは間違いないところだろう。

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