世界の記述

2017年10月20日

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 「なぜ、自分はこんな目に遭わねばならないのか」。そんな自問を繰り返す人が現代世界で最も多い国はどこか。それは南米のコロンビアではないだろうか。「百年の孤独」を書いたノーベル賞作家、ガルシア=マルケスを生んだ国。コカインの産地。19世紀の独立前から延々と続いてきた内戦。世界中に出稼ぎに行く美しい女性たち・・・。外からはそんなイメージだが、意外に知られていないのは「家を、故郷を失くした人」が世界で最も多い国という点だ。

(iStock.com/Manuel Fernando Mesías Castro)

 ノルウェー難民委員会(NRC)の研究機関、国内避難民監視センター(IDMC)の2016年までの集計によると、世界には約4000万人の国内避難民がおり、国別ではコロンビアが最大の720万人。以下、シリアが630万人、スーダン330万人、イラク300万人、コンゴ民主共和国220万人と続く。国境を越える難民ではなく、家を失い国内に留まっている避難民の数だ。

 コロンビアは昨年10月、内戦終結をもたらしたサントス大統領のノーベル平和賞受賞で久しぶりに世界の脚光を浴びた。だが、それはあくまでも政治の世界の話。内戦で着の身着のままで逃げてきた避難民の生活はほとんど改善されておらず、どの都市の周辺にも彼らが暮らすスラムが広がる。コロンビアの治安は殺人率の激減に表れているように確実に良くなっているが、家も職もない避難民の一部が絶望し犯罪に手を染めてきたのは事実だ。

 コロンビア内戦では半世紀あまりで約22万人が殺害された。このためどうしても銃撃戦のイメージが先に立つが、戦争の暗部が露骨に現れるのは、一般人への恐喝、略奪行為だろう。コロンビア国立歴史記念センターによると、戦乱に紛れて一般人を殺害した勢力は右派民兵組織が圧倒的に多く、以下、左翼ゲリラ、政府軍の順になる。

 内戦は単に政府軍とゲリラの戦いではなく、ゲリラから身を守る「自警団」を名乗って大きくなった右派民兵が絡む三つ巴状態で、一般人にとってはこの民兵が一番たちが悪い。彼らにいきなり、家に押し入られ財産も畑も奪われ、暴行を加えられて逃げて来たというのが国内避難民の一つの典型なのだ。

 形の上で内戦が終わったとは言え、こうした人々はまだ帰還できる段階に至っていない。民兵ら武装集団が依然として幅をきかせているからだ。

 そんな折、コロンビアは、隣国ベネズエラの圧政から逃げてくる難民も受け入れ、その数は約20万人に上る。

 この国はどうやって避難民の暮らしを回復させるのか。傍観せず、「孤独」に追いやらず、少なくともその情報を見続けることが大事だ。

  
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