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2010年10月17日

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北村 稔 (きたむら・みのる)

立命館大学文学部教授。1948年、京都府生まれ。京都大学文学部卒(法学博士)。専門は、中国近現代史。主な著書に『第一次国共合作の研究――現代中国を形成した二大勢力の出現』(岩波書店)、『「南京事件」の探究―その実像をもとめて』(文春新書) 、『中国は社会主義で幸せになったのか』(PHP新書)。

 ノーベル平和賞を受賞した中国民主化運動の活動家、劉暁波氏。中国共産党の専制一党独裁を批判する宣言文「08憲章」発表など、その一連の活動が世界的な評価を受けたのである。

彼の主張をまとめた宣言「08憲章」は、天安門事件から20年目にあたる2008年12月、インターネット上に発表された宣言文。自由、人権、平等、共和など、国家の民主化に欠かせない理念の上に、憲法改正や三権分立、人権の保障、言論の自由、都市と農村の平等、財産保護など、現代中国が直面するさまざまな問題を解消し、平和と人権の進歩を実現することを宣言するものである。

08憲章は共産党の通信妨害を受けながらも、中国国内、アメリカ、フランス、日本などにも広がり、署名数は数日で数千人に達した。

だが、起草者であるとみなされた劉氏は、共産党当局によって直ちに拘束され、通信手段を遮断されるなど、表現の自由を奪われる状態にあった。今年2月には、「国家政権転覆扇動罪」によって投獄され、今回の受賞も遼寧省錦州市の錦州監獄で、妻の劉霞氏からの伝聞で知ることになった経緯は、記憶に新しい。

中国が専制的一党独裁の政治を改めることを期待しての授賞と思われるが、中国近現代史の専門家である北村稔・立命館大学文学部教授は、強かな中国がノーベル賞くらいでは変わることは難しい、という見方を示す。

――中国の民主化運動活動家・劉暁波氏がノーベル平和賞を受賞しました。世界と中国はこれをどのように見ているでしょうか。

北村稔教授(以下、北村教授):ノルウェーが中国の圧力に屈服せずノーベル賞を出したことは、世界がいまの中国の政治スタイルに、疑問を突きつけたということです。「08憲章」は、「連邦制国家の樹立により香港・マカオの自由制度を維持する」「台湾との和解案を追及」「国内の各民族の平等を探求」など、共産党の追及する方向とはまったく違う国際関係のあり方を求めています。

 日本でも、尖閣問題やレアアースの事実上の輸出停止など、中国の横暴さが報道されているなかでの出来事でした。中国の専制政治を、世界が否定したようなものです。

 一方、「08憲章」は2008年に発表されましたが、そのあと劉氏は拘束、投獄され、実効性に見通しが立ちません。

 「08憲章」は、大変素晴らしいものですが、私は、あの憲章が現代の中国で受け入れられ、実現に向かうことはないだろうと悲観的に捉えています。なぜならば、それほどに中国の一党独裁体制は根深いものなのです。

 確かにノーベル賞受賞は、世界では喜ばしいニュースとして報道されています。しかし、肝心の中国国内では受賞のニュースが途中で途切れた映像をご覧になった方も多いかと思いますが、報道管制もしているし大きな影響力を及ぼすことは難しい。

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