中国はいま某国で

2010年11月1日

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谷口智彦 (たにぐち・ともひこ)

慶應義塾大学大学院SDM研究科特別招聘教授

明治大学国際日本学部客員教授。2008年7月まで3年間外務省で外務副報道官。元日経ビジネス記者、編集委員、ロンドン外国プレス協会会長。著書に『同盟が消える日』(編訳、ウェッジ)など。(2013年1月末日現在)

 ミクロネシア連邦に中国が外交攻勢をかけている。面積にして奄美大島程度、人口11万人強という南太平洋の島国に、北京は何を求めるのか。

3権の長たちに公邸新築プレゼント

 中国はこのほど、共産党中央高級幹部で閣僚級、外事弁公室副主任の杜起文氏(58)を、近辺一円の国を管轄する特使に任命した。杜特使は今年4月13日ミクロネシアを訪れ、エマニュエル・モリ大統領と会見した。

 これに先立つ前史はいろいろある。まず2006年9月、中国はミクロネシアの大統領、副大統領、議会議長と主席判事のために、それぞれの公邸を新築建造して引き渡した。

 次いで今年2月10日、首都を抱えるポンペイ州の立派な中央行政庁舎が新築落成、祝宴が開かれたが、モリ大統領がその際挨拶で強調した通り、このビルも中国が資金と技術を出し、建てて与えたものである。これは援助ではない。露骨な贈答攻勢だ。

 ミクロネシアは、マーシャル諸島共和国、パラオ共和国とともに戦後米国の信託統治領となった。その後各国は独立、主権国家となり国連で議席を占めるに至るが、1986年、米国は諸国と「自由連合盟約(コンパクト)」を結び今日に及ぶ。いわば米国の保護国で、労働力は米本土と流出入が自由、国防は米軍が担う。

 北京の狙いは2つか。コンパクト国のパラオとマーシャル諸島は、いずれも台湾と正式な関係を維持しており、これの影響を中和したいだろう。

 いま1つ、ゆくゆくは、人民解放軍の拠点に活用したいと考えていたとして不思議はない。飛行場や、港湾を造ってやればよい。太平洋の真ん中以西は中国が面倒を見ると、公言した軍関係者がいたのを思い出す。

 先の敗戦まで四半世紀、一円の島嶼国は日本の委任統治領だった。ミクロネシア独立後の初代大統領は日系人。現大統領も先祖が高知の出身だ。一帯は、日米両軍死闘の地でもある。日本と米国それぞれに因縁浅からず、しかも関心が行き届かない場所。そこに中国は、確実な地歩を築きつつある。

北京との友愛
ヒマラヤより高い

 パキスタンに対する中国の援助や軍事的テコ入れがあまりにも奏功したせいか、今やパキスタンの世論に、中国崇拝ムードを生み出している。

 同国現地語のウルドゥー語による新聞は、外の眼をあまり意識しないためだろうか、中国礼賛論において手放しで、包み隠すところがない。

 ウルドゥー語紙「カブライン」5月26日付社説によれば、パキスタン・中国関係は「ヒマラヤより高くそびえる」のだという。この言葉は実のところ使われ過ぎて手垢がついているくらいだが、「今日、真実味を一層帯びた」とし、社説はこう続ける。

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