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2017年11月27日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。1972年共同通信社に入社、経済分野を取材し編集委員などを経て2010年に退職し、現在は経済ジャーナリスト。

 復旦大学の呉心伯・国際関係学院副院長、アメリカ研究センター所長はこのほど、日本記者クラブでトランプ米大統領の日本、韓国、中国などアジア歴訪を踏まえて、アジア、太平洋の変化と中国の地域戦略について講演した。

 アジア、太平洋地域の関係について「この地域には米国、中国、ASEAN(東南アジア諸国連合)、日本の4つのプレーヤーがいるが、中国が大きく伸びている経済力を背景にして非常に大きな推進力になっている。この地域のことに関わりたくない米国の影響力は下がっている。日本は米国との同盟関係により新たな影響や決まり事を作ることができないため、4つのプレーヤーの中で最も弱い」と、日本の影響力の低下を指摘した。

(Ingram Publishing/iStock)

来年は日中の重要な年

 日中関係については「来年は非常に重要な年になる。安倍晋三首相と習近平国家主席、李克強首相との首脳会談は非常に良いムードだったので、これは良い兆しだと思う。安倍首相が日中関係を改善しようとするのは、政治的な判断によるものであって、戦術的需要によるものであってはならない。そうでないと日中関係は実質的な改善は難しい」と述べ、小手先の判断変更では関係改善にはつながらないとの見方を示した。日中関係について「首脳の相互訪問も重要だが、もう一つは日中間で具体的な分野で協力が行われるべきだ。2国間、3国間、マルチの協力も必要で、日中両国の市民が協力の成果を実感できるものが良い」と指摘した。

 アジア、太平洋地域の変化について「これまでは米国主導の単一的な構造だったが、いまは多元的、インターラクティブな構造になっており、米国・中国を中心にして安全保障面、経済面での連携が深まっている」と分析、「興味深いのは、経済的には中国と関係を深めつつ、安全保障は米国に依存するという、経済と安全保障を引き離そうという動きがあること」と指摘した。米国と中国がアジア、太平洋地域で地政学的な争いが激しさを増す中でこの地域の諸国は「争いが激しくなれば、これらの国は米国か中国のどちらかにつかなければならなくなり、多くの国がこれを憂慮している」との見方を示した。

 中国の地域政策については「地域の共同体を作りたいという願いがある。中国は大国として、一方的に自国の利益を求めるのではない」と述べ、地域の利益を優先すべきだとの考えを示した。

太平洋に線引きはしない

 米中の衝突の可能性に関しては「米中はお互いに依存する関係にあるので、衝突は経済的見地からあり得ない」と述べた。また中国が求めるアジア、太平洋地域の目標は「極めて限定的で、西太平洋と中国周辺の東シナ、南シナ海を考えている。すべての太平洋を考えている米国とは異なる」と述べ、米国のように太平洋全域をコントロールする意思のないことを強調した。

 また「太平洋に地理的な線引きをするのではなく、米国と戦略的に力、利益のバランスの共通認識を持つことが重要だ」と指摘し、一部で言われているような太平洋上に中国の支配地域を示すラインを引く考えのないことを明らかにした。これに関連して「米国が毎日のように行っている中国領土の海岸から14キロまで接近した海上、空中からの偵察活動を止めることが必要だ。頻繁な偵察は中国に対して非常に失礼だ」と述べた。

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