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2017年12月14日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

 前人未踏の「永世七冠」を達成した羽生善治氏(47歳)は13日、日本記者クラブで記者会見し「30年以上の棋士の生活のなかで、一つの点にたどりついたのは、感慨深い」と述べるとともに、AI(人工知能)を搭載した将棋ソフトについて「AIソフトも万能ではなくミスをする。人間とは考え方が全く違うので、それを照らし合わせて分析して、前に進むのが理想ではないか」と述べ、AIの手法も取り入れながら将棋が進歩するのが望ましいとの考えを示した。

 囲碁の井山裕太氏と並んで国民栄誉賞の授与が政府で検討されていることには「検討してもらっていることは大変名誉なことだ。引き続き棋士として邁進したい」と喜びの表情を見せた。

羽生善治氏(はぶ・よしはる)1970年生まれ。小学1年生で将棋を教わり、1985年に史上3人目の中学生棋士となった。89年に当時最年少記録となる竜王のタイトルを獲得。96年には王将戦に勝って当時の7冠を独占。中終盤で思いもかけない妙手を繰り出して何度もタイトルを獲得してきたことから「羽生マジック」と称されている。最近ではタイトルを失って一冠となったこともあったが、今年は巻き返して将棋界初の「永世7冠」を達成した。埼玉県出身(日本記者クラブ提供)

コンピュータソフトを味方に

 今年の将棋界は、4月から5月にかけて佐藤天彦現役名人がAI機能を持ったコンピュータソフト「ポナンザ」に連敗したことで、プロ棋士は将棋ソフトに勝てないのではないかという、危機感が生まれていた。

 AIソフトの進歩について「1年経つとかなりのスピードで強くなっている。人間の考えでは発想の幅が狭くなり、盲点、死角がある。これからは人間が持ってない発想、アイデアで将棋が上達していく時代に入っている。コンピュータと人間が並行して同じように進化していくかどうかは、もう数年経たないと分からない」と指摘、コンピュータソフトを味方につけて強くなるべきだとの考えを明らかにした。

 今後の目標は「公式戦1400勝にあと42勝と近づいているので、それを目指したい。大山康晴氏の通算1433勝(歴代1位)に追いつき、追い越したいので頑張りたい」と話し、さらなる高みを見据えた。

失敗を恐れない

 「棋士は常に100手先を見通して指しているイメージがあるが、10手先を読むことは出来るが、現実はそこまでいかない。常に想定外のことが起きる。五里霧中の中で、前に進もうとしており、あまり自信も見通しもないままにやっている」と述べた。

 「羽生マジック」と呼ばれる将棋の特徴については「自分の中では平凡な手を選んでいることが多いと思っているが、一方で、いかに人と違う発想、アイデアを持って考えることができるかの比重が高くなっている。新しい手を指すときは、ある程度、失敗になることを承知のうえでやらないと、いまの移り変わり速い戦術の中で対応するのが難しくなる」と指摘、失敗を恐れない姿勢を強調した。

 連敗が少ないことには「あまり突き詰めて考えないことにしている。突き詰めすぎると精神的に厳しくなるので、ある意味でいい加減さも大事なのではないか。最近は対局後に一晩しっかり眠れば気持ちは切り替えられる」と話した。

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