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2010年12月11日

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漆原次郎 (うるしはら・じろう)

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、科学技術関連の記事を寄稿。早稲田大学大学院科学技術ジャーナリスト養成プログラム修了。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』『日産驚異の会議』『宇宙飛行士になるには』など。

基礎研究の担い手として、独立行政法人の存在も欠かせない。この独法研究機関に対して、再編の動き進んでいる。議員立法を受けて文部科学省が打ち上げた「国立研究開発機関」の制度だ。国のトップダウンによる研究開発を目指すという。一見、効力のありそうな計画だが、成否の分け目はどこにあるだろうか。イノベーションを支える基礎研究の観点から捉えて見ると……。

*前篇はこちら

 イノベーションの根幹部分を支えるのが基礎研究とされる。企業とも大学とも異なる担い手が、独立行政法人だ。

 独立行政法人の研究機関は、もともと省庁の内部にあったものや、国立研究所だったものが多い。基礎研究との関連では、文部省や科学技術庁の傘下だった機関が統合されてできた宇宙航空研究開発機構(JAXA)や、通商産業省工業技術院などが前身の産業技術総合研究所(産総研)などがそうだ。また、特別法により設置された特殊法人から独法化した理化学研究所(理研)などの例もある。これらは、2001年の省庁再編を機に、独立行政法人化していった経緯がある。

 独立行政法人の中でも、研究開発に携わる機関は「研究開発法人」と呼ばれ、理研やJAXAなどを含め38法人がある。

 いま、この38法人に、再び再編の波が押し寄せようとしているのだ。

 2008年、「研究力開発強化法」という法案が議員立法で可決成立していた。この法律に規定されていたのが「研究開発法人」だ。制度の創設などの詳細は衆参両院で附帯決議になったものの「検討・措置は法律の施行後3年以内」。期限が徐々に迫ってきた2009年12月、民主政権は「研究開発を担う法人の機能強化検討チーム」を発足。文部科学大臣と各省庁の副大臣や政務官などが出席者となり、研究開発法人のあり方を検討してきた。今年4月には検討チームが「中間報告」を提出。「国立研究開発機関」(仮称)の制度を創設するよう提言した。その後も、閣議や内閣府の総合科学技術会議などで、この国立機関の制度を推進することが決まっていった。今後、検討チームの想定どおりに進めば、2011年から関連法案が提出され、2013年には国立研究開発機関が発足することになる。

「金、時間、人」の改革に期待かかる

 独立行政法人化から約10年。ここに来ての再編の背景には、独立行政法人としての研究機関を運営すると「研究開発などの成果を最大化するためにはなじまない」(中間報告より)といった問題点が、以前から上がっていたということがある。

 例えば、柔軟な資源配分ができていなかった点が挙げられる。研究開発の進み具合などによって、研究資金の規模はその時々に大きく変動していく。だが、独立行政法人の研究機関の運営費交付金は国立大学と同様、前年度比で一定割合の予算が減額されていく措置がとられてきた。

 また、研究者が口々に言うのが、「研究の期間が短すぎる」という点だ。独立行政法人が国に提出する中期目標の長さは、最長で5年。一方、「研究成果を上げるには10年や20年、50年だってかかるものもある。3年や5年で仕上げるような研究ばかりしていたら、日本の研究成果は小粒なものだけになってしまう」(ある研究者)という声が聞かれていた。とりわけ、森林や宇宙などの自然を対象にする基礎研究では、短期間で成果を出すこと自体に無理があるものも多い。

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