チャイナ・ウォッチャーの視点

2011年1月12日

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城山英巳 (しろやま・ひでみ)

時事通信社外信部記者

1969年生まれ、慶應義塾大学文学部卒業後、時事通信社入社。社会部、外信部を経て2002年6月から07年10月まで中国総局(北京)特派員。 外信部を経て11年8月から2度目の北京特派員。11年、早稲田大学大学院修士課程修了。現地での中国取材は10年に及ぶ。16年5月に帰国し、現在外信部記者。近著に『中国 消し去られた記録〜北京特派員が見た大国の闇』(白水社)、著書に『中国臓器市場』(新潮社)、 『中国共産党「天皇工作」秘録』(文春新書、「第22回アジア・太平洋賞」特別賞受賞)、『中国人一億人電脳調査』(文春新書)がある。14年に戦後日中外交史スクープで13年度「ボーン・上田記念国際記者賞」を受賞。

 年末恒例の中国国務院新聞弁公室主任による記者会見は、報道規制の「元締め」である同弁公室が、国際社会に対し「開かれた中国」をアピールする舞台となっているが、昨年12月30日の記者会見で王震主任は中国の「網民」(ネットユーザー)が4億5000万人に達したとした上でこう認めざるを得なかった。

 「ネットは既に中国経済社会における重要なインフラであるとともに影響が巨大な新型メディアとなった」

ネット空間での「官」と「民」のせめぎ合い

 今や、中国共産党にとってネットは、国家の生き残りを懸けて掌握しなければいけない「空間」だ。党機関紙・人民日報ネット版『人民網』は昨年11月、「ネット権力は国家において制海権、制空権、制天権と同様、最も重要な権力であり、国家間のネット権力争奪戦は負けられない戦争だ」と指摘したが、国内的にも、ネット社会の浸透という現実に直面し、共産党がこれまで完全掌握してきた「プロパガンダ」という国民向け情報操作が崩れ去ろうとしている。つまり共産党の管理する伝統メディアが国民に情報を流す前に、国民はネットにより早く真実を知ることができるようになったからだ。自分たちが把握できない言論空間がじわりと広がり、一党独裁体制を揺るがしかねない事態に陥っているのだ。

 それを加速させたのが2009年、「ツイッター時代」に入った中国ネット社会の変化だった。米国発の「ツイッター」、中国版ツイッターと呼ばれる「微博」(マイクロブログ)を舞台に、自己主張したい「民」と、それを統制しなければならない「官」のせめぎ合いがどう展開するか。2011年の中国政治社会の安定を占うカギとなると言っても過言ではない。

言論の自由守られるツイッターの影響力

 まずは「ツイッター」と「微博」の違いを紹介しよう。日本でもお馴染みのツイッターは米国で管理されており、中国当局はそこに書き込まれた言論を勝手に削除することができない、いわば検閲不可能なネット空間だ。中国の著名ブロガーの安替氏は「中国人は2000年来初めて、言論の自由が100%守られた全国的なプラットホームを手に入れた」と評価する。

 ツイッターは09年7月に接続が制限され、中国では表向き使えなくなった。同月、新疆ウイグル自治区ウルムチで大規模暴動が起こり、引き締めが強化されたからだ。そこでツイッターを使いたい言論人・知識人らは特殊なソフトを使って規制の「壁」を乗り越えなければならなくなり、現在の利用者は10万人超にすぎない。しかし新技術を駆使しツイッターを利用し続ける民主活動家や人権派弁護士、改革派知識人たちにとって、共産党が削除したくても消すことのできない対話のキャッチボールを展開していることが大きな意味を持つ。

天安門広場はもういらない?

 例えば、ノーベル平和賞を受賞した民主活動家・劉暁波氏の妻、劉霞さんもツイッター愛用者である。昨年10月の受賞決定直後、劉霞さんは、服役中の夫と監獄で面会し、そうした事実をツイッターで世界に発信したが、中国当局はそれを削除できない。結局、10月18日、「心配しないで」とツイッターで言い残し、劉霞さんのつぶやきは途絶えた。公安当局が軟禁状態に置いていた劉霞さんからツイッターそのものを取り上げたからだ。

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