外資による山林買収 
感情論では解決しない

公益の視点ある制度を


WEDGE REPORT

ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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「日本の山林が外資に買われている」との報道が相次ぐ。
感情的な排斥論が広がるが、「山林か否か」「外資か否か」では何も解決しない。
山林以外の土地利用にも問題はあるし、日本人がその問題を起こす場合もあるからだ。
社会インフラや安全保障など、公益性の高い土地の所有や利用について
抜け穴だらけの現行制度を見直すことが、止血策として急務である。

 「戦後社会は、倫理をもふくめて土地問題によって崩壊するだろう」*1

 かつて司馬遼太郎は日本の土地制度を嘆き、そう警鐘を鳴らしたが、今、それが現実のものとなりつつある。

 外国資本が日本の森林を買っている─。

 最近、マスコミがこの話題を取り上げることが多くなった。そうした売買の動きは国境離島でも見られる。2010年2月、長崎県五島列島の福江島に上海資本の視察団が現れた。地図を見ると、福江島は上海から日本への最短距離にあたる。一行は五島市長への表敬訪問も行い、島での林業経営や別荘地開発等に関心を示した。周到な計画をもって今も地元関係者との交渉を続けている。

 鹿児島県奄美大島の一角でも動きがある。国際的な海運会社グループが、住民の2度にわたる猛烈な反対運動にもかかわらず、すでに1億6000万円を投じ、山林買収とチップ工場の建設を進めている。

 こうした中、北海道が全国で初めて実態調査を行った。それによると、外国資本が所有する林地は道内で少なくとも33カ所、計820ヘクタール(10年11月現在)。うち3カ所、計109ヘクタールは自衛隊駐屯地から約3キロメートル内に位置する。所有企業、個人の所在地は香港が12社と最も多く、他に英領バージン諸島所在の1社も香港資本であった。

 道内には不明地主も少なくない。森林を保有する企業2141社宛てに調査票を郵送したところ、全体の4割を超える913社分(計1.4万ヘクタール)が「宛先不明」で戻ってきた。そもそも土地所有者の所在すら行政が把握できていないことも判明した。今回の調査以外にも、所有者の特定が困難な森林が道内に2.5万ヘクタール以上あると見られており、合計すると3.9万ヘクタールが地主不明の森林(不明森林)である。このため、道はすべての林地取引に際し、新たに事前届出を求める独自の条例を11年度中に制定する方針だ。

日本の土地の地籍
半分が把握できず

 増加する森林売買の背景には、採算の取れない山を手放すしかない所有者の苦渋の選択と、底値の山に様々な価値を見出した投資家の思惑がある。

 日本は資源のない国だと言われるが、実は国土の67%を森林が占め、水や空気や土壌といった生存の基盤としてのいわば21世紀型の資源に関しては世界でも指折りである。
長引く林業低迷で19年連続で地価下落が続く日本の山は、グローバルな資源争奪戦の視点で見れば「買い」なのだ。

*1 司馬遼太郎『土地と日本人』(中公文庫、1980年)

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