ギリシャ・クレタ島が中国の手に?
ザンビア鉱山では銃乱射事件


谷口智彦 (たにぐち・ともひこ)  慶應義塾大学大学院SDM研究科特別招聘教授

明治大学国際日本学部客員教授。2008年7月まで3年間外務省で外務副報道官。元日経ビジネス記者、編集委員、ロンドン外国プレス協会会長。著書に『同盟が消える日』(編訳、ウェッジ)など。(2013年1月末日現在)

中国はいま某国で

中国はアフリカや中南米、太平洋諸国でどんな活動をしているか。日本の報道が見落としてきた第三国での動きを追いかける。ウェッジ誌連載中のコラムを逐次アップ。

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ギリシャのクレタ島をコンテナ物流のハブにする計画が、同国ならびに中国政府の手によって進行中だ。

地中海が「西シナ海」に?

 リーマン危機後、軒並み財政を悪化させた地中海沿岸諸国、例えばポルトガルやスペインでも、中国は土地や港湾への投資を進めている。このままだと、地中海は「西シナ海」になってしまうと案じる声すら出始めた(2010年11月13日付Cyprus Mail紙)。

 クレタ島の重要さは、地中海文明の中心として栄えた昔から変わらない。エーゲ海の入口で東西に長く横たわる島は、トルコと黒海への物流を握るには不可欠の位置にある。スエズ運河との往来にも至便で、戦略要衝としての意義は第2次世界大戦中、チャーチル英国首相をして「クレタを失うことは犯罪である」と言わせたほどだ。

 同島南岸ティンバキにおける大規模コンテナ埠頭建設に中国が関心を示したのは、05年11月にさかのぼる。ギリシャ財政の破綻を受け10年10月同国を訪れた中国の温家宝首相は、総額50億米ドルをギリシャの物流部門に投資すると発表した。この分だとクレタ島カステリに計画中の新空港建設案件も、中国企業の手に落ちる可能性が高い。金欠のギリシャ政府には、これらを歓迎する以外に選択肢がない。

 弱い国と政府は、小切手帳をもって現れる中国のいわゆる企業家に、こうして喜んで資産を売っていく。しかしこの際の相手は、例えば日本企業などと全く種類を異にする。

 クレタの件で中国側当事者は中国海運集団(本社上海)という企業だが、同社を含め中国の対外大型投資を担うのはみな国営企業で、幹部は中国共産党と相互乗り入れ関係にある。つまり相手とは、共産主義独裁政党・国家資本・企業の三位一体である。

 貿易に加え資本の移動を自由にすることがグローバル時代の金科玉条であるかに言われるが、その際投資主体として想定されていたのはあくまで非政治的な民間営利体だった。中国の行動を同じ尺度で見てよいものだろうか。

ザンビア鉱山
中国人管理者が銃乱射

 南部アフリカの内陸国ザンビアで、待遇改善を訴えた炭鉱労働者の一群に鉱山管理者の中国人2人が無差別に発砲、10人以上を傷つける事件があった。同国シナゾンゲ地区にあり中国企業が所有する「コラム炭鉱」でのこと。

 9年前の開鉱以来、作業環境の悪さが度々問題となっていた。賃金は月額31米ドルから、高い者でも100米ドルとちょっと。医務室はないし労働契約も満足に交わさないとのことだったが、政府は見て見ぬ振りをしてきた。

 その極めて低い賃金でさえ2カ月の欠配に及び、労働者たちが管理棟前に集まり抗議の声を挙げていたところ、シャオ・リシャン、ウ・ジウハという48歳と46歳の中国人管理者がショットガンを手に現れ、発砲したらしい。負傷者は少なくとも13人という。死者が出なかったことだけが不幸中の幸い。

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「中国はいま某国で」

著者

谷口智彦(たにぐち・ともひこ)

慶應義塾大学大学院SDM研究科特別招聘教授

明治大学国際日本学部客員教授。2008年7月まで3年間外務省で外務副報道官。元日経ビジネス記者、編集委員、ロンドン外国プレス協会会長。著書に『同盟が消える日』(編訳、ウェッジ)など。(2013年1月末日現在)

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