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2011年7月13日

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石井 彰 (いしい・あきら)

1950年東京都生まれ。エネルギー・アナリスト。エネルギー・環境問題研究所代表(JOGMEC特別顧問、早稲田大学非常勤講師・研究員)。上智大学卒業後、日本経済新聞社記者を経て、石油公団で資源開発に携わる。1980年代末からは、石油・天然ガスの国際動向調査分析に従事。ハーバード大学国際問題研究所客員、パリ事務所長などを歴任。近著に『エネルギー論争の盲点 天然ガスと分散化が日本を救う』(NHK出版新書)。

脱原発で足元を見られる日本

 原発の再稼動はおろか、来年には全原発が停止するという状況も予想されるなか、当面の代替電源は、液化天然ガス(LNG)による火力発電しかない。そのため、LNGをいかに確保するかが、ここ数年の日本のエネルギーの鍵を握ると言っても過言ではない。

 あまり知られていないが、LNG市場を世界に先駆けて育ててきたのが、東京電力など日本の電力会社だ。日本に輸入される天然ガスの約6割が発電に使われる。加えて世界の天然ガスの輸送は9割以上がパイプラインだが、生産地から遠く海に隔てられている日本の場合、“液化”して運ぶ必要がある。液化のためのプラントや、それを専用に運ぶLNG船の開発には、長期的かつ多額の投資が必要で、日本の電力会社という大口の需要家がいたからこそ発達してきた。

 しかし、全原発がストップするとなるとざっと見積もっただけでも、2000万トンのLNGが必要になる。ちなみに日本の年間需要量は約7000万トン、世界需要が約2.2億トンだから、2000万トンの増加というインパクトの大きさが分かる。

 福島の原発事故前まで、世界のLNG市場の需給バランスは供給過多にあった。というのもカタールが、天然ガスの生産量が漸減していた米国向けに、LNGの生産設備を増強して7700万トンの生産体制を構築したからだ。だが、米国でシェールガス革命(後述)が起きて天然ガスが増産されるようになったため、カタール産のLNGは行き場を失い、ロシア産のパイプラインガスの半値で欧州に輸出されるという状況を招いた。福島の事故以降、世界でも脱原発の動きが見られ、売り手が力を盛り返す格好となった。

 それでも、市場にはスポットのLNGの供給力が年産約5000万トンあるため、一気に需給が絞まり価格が上昇するということにはならない。ただ、これから日本の原発が全て停止することが現実のものとなれば、話は変わってくる。世界的に在来型やシェールガスベースの新規LNG開発が行われていくことになるが、生産開始までに4~5年はかかる。とすると、今の新規開発のガスが市場流通するのは、はやくとも2015年。一方で、今のスポット物の余剰は、来年から再来年に解消されると私は見ている。そうすると、2013、14年はちょうど端境期となって、一気に需給バランスはタイトになるはずだ。そのとき、大半の原発が動いていなければ、日本の電力会社をはじめとした需要家は、当然足元を見られた状態での取引に応じざるを得なくなる。

高値掴みをしてきた日本の電力会社

 もともと、日本の電力会社はオイルメジャーから「プレミアム市場」と呼ばれるほど、高値で購入してきた。

 震災直後には、ロシアのガスプロムが、自国産パイプラインガスよりも安いカタール産のスポットLNGを買い付けて日本の電力会社に融通しようとする一幕もあった。

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