WEDGE REPORT

2011年8月26日

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脱原発の切り札として、菅首相が退陣条件の一つに昇格させた再生可能エネルギー特別措置法案。
手本としている欧州で、次々と見直しが進んでいることをご存知だろうか。
コストが高く不安定な再生可能エネルギー。そもそもの導入目的を再考すべきだ。

 福島第一原子力発電所の事故の収束が長引くに連れ、原発に対する国民の視線が厳しくなっている。その一方、原発に代わる電源として太陽光、風力発電などの再生可能エネルギーが注目を浴びている。7月14日からは、国会でも再生可能エネルギーで発電された電力を固定価格で買い取る法案の審議が開始された。

 再生可能エネルギー利用の利点は次の通りだ。二酸化炭素を原則排出しないので、温暖化問題の解決に寄与する。さらに、自然のエネルギーであり自給率を向上させる。関連産業が発展し、雇用が創出される可能性もある。

 多くの利点があるとされる再生可能エネルギーを普及させるために、欧州諸国は再生可能エネルギーで発電された電力の買い取りを開始した。ドイツが2000年から本格的に導入を開始し、その後欧州を主体に各国に広まったフィードインタリフ(FIT)と呼ばれる制度だ。日本の法案もこれを下敷きにしている。

欧州で露呈するFITの欠点

 欧州では制度導入から10年が経過し、FITの欠点も明らかになり、各国政府は制度の見直しを行っている。発電コストが高い再生可能エネルギーの買い取り負担が大きいにも拘わらず、理論通りのメリットが少なくFITの費用対効果に疑問が出てきたためだ。

 FITによる買い取り費用は電力料金として需要家が負担する。当初の予測より導入量が多くなった場合には、政府も予想しなかった大きな負担を引き起こす。スペイン、イタリアなどでは大規模太陽光発電の買い取り価格が、事業者にとり有利であったために、異業種から多くの参入を招いた。FITで長期間収入が保証されるが、事業リスクがほとんどないという極めて稀で有利な投資であるためだ。イタリアでは、予定された導入上限量が瞬時にうまってしまい、08年には政府は上限量を撤廃することになった。

 導入量の増加は消費者の負担増を招く。イタリアでは09年に1キロワット時(kWh)当たり0.25ユーロセントだった買い取りの負担金は、11年には1.54ユーロセントに達すると報道されている。制度が続き太陽光発電設備が増える限り、長期に亘り消費者の負担増も続くことから、政府は買い取り価格の引き下げを決めた。さらに6月1日に発効した新制度では大規模太陽光発電設備からの買い取り総額に上限値が設定された。

 FITにより再生可能エネルギーの導入が進んだ欧州諸国は軒並み電力価格の上昇に直面している。EU27カ国の4月1日現在の家庭用電力料金を見ると、年間3500kWhの標準使用量で、風力の発電量が20%に達したデンマークが最も高く1kWh当たり28.64ユーロセント、2番目は風力と太陽光の発電量が20%近くになったドイツの25.88ユーロセントだ。年間7500kWhの使用量の家庭向けではイタリアが最も高く25.40ユーロセント、次いでデンマーク24.81ユーロセント、ドイツ24.33ユーロセントと続く。いずれも日本を上回っている。

 家庭と産業の電力料金の負担による再生可能エネルギーの導入により、どんな成果が得られたのだろうか。再生可能エネルギーの導入は化石燃料の消費減に結び付くはずだが、実際にはEU27カ国の近年のエネルギー自給率は低下している。一次エネルギー消費量の増加に対し、再生可能エネルギー増加量が絶対値では大きくないためだ。

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