WEDGE REPORT

2011年8月31日

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漆原次郎 (うるしはら・じろう)

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、科学技術関連の記事を寄稿。早稲田大学大学院科学技術ジャーナリスト養成プログラム修了。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』『日産驚異の会議』『宇宙飛行士になるには』など。

 前編では、三大再生可能エネルギーといわれるエネルギーのうち、太陽光とバイオマスの現状と未来を見てきた。発電コストが高いながらも国が力を入れ続け、革新技術の開発も続く太陽光。そして、海洋資源に望みを託すバイオマス。日本におけるこの二つのエネルギーの現状は、そう表現できる。

 一方、世界が主要な再生可能エネルギーと位置づけているのは風力発電である。しかし、なぜか日本では冷淡な扱いを受け続けている。

日本で嫌われ者の風力
本格普及の鍵は洋上にあり

 世界の再生可能エネルギーの設備容量は、原発300基分相当の300ギガワットほど(大規模水力発電を除く)。このうち風力発電は2010年初頭時点で半分以上の約160ギガワットを占めている。太陽光発電はわずか約10ギガワットなので、その差は16倍もある。再生可能エネルギーの普及度合などで日本と比較されることの多いドイツでは、電力供給量に占める太陽光発電の割合が1.1%なのに対して、風力は約6倍の6.5%。スペインでは、太陽光2.6%に対して風力は約8倍の21%だ。日本はといえば、太陽光0.2%に対し、風力も0.2%。この差を見れば、日本は世界の再生可能エネルギーの趨勢に目を背けてきたといわれてもしかたない。

 サンシャイン計画が始まった1970年代前半、風力発電は自然エネルギー戦略に含まれていなかった。1977年、ようやく電電公社と東海大学がそれぞれ風車の実験機を設置し、風力発電の研究開発が始まった。翌78年には、科学技術庁(現在の文部科学省)が、ゴルフ場などに風力発電装置を設置してカートの充電などを試す「フートピア計画」を実施した。だが、自然エネルギーの技術開発において、この頃から傍流に置かれていた感は否めない。

 なぜ、日本では風力が嫌われてきたのか。まず、用地の問題がある。日本は人口密度が高い上に、風向も変わりやすいため、風力発電に適した場所が少ないというものだ。次に、風が安定して吹くかという安定供給の問題や、低周波など人体への影響の問題、さらには周辺の景観を損ねるとか、台風や落雷に弱い、建設費が嵩むといったことが言われてきた。

東京大学工学系研究科社会基盤学専攻・石原孟教授。

 これらの問題点を、東京大学工学系研究科社会基盤学専攻教授の石原孟氏にぶつけてみた。風工学の研究で培った知見を土台に、風力発電の技術開発を進めている研究者だ。

 石原氏は、風力発電をめぐって否定的に言われてきた課題は、どれも解決済みであるか、解決可能であると言う。

 まず、用地の問題については、「広い海を使えばよい」と主張する。「太平洋側の海での風向を調べると、南から北へあるいは北から南へと一定方向に吹く傾向が強い。風速も洋上のほうが大きい」。

 洋上風力発電は、すでに北海で本格的に普及している。2010年時点で、欧州における洋上風力発電の設備容量は296万キロワット。建設中が300万キロワット、計画中が1900万キロワット。知名度は低いが、日本でも北海道せたな町、山形県酒田市、茨城県神栖市に洋上風力発電施設が建設されており、風車が動いている。

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