中国はいま某国で

2011年9月13日

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谷口智彦 (たにぐち・ともひこ)

慶應義塾大学大学院SDM研究科特別招聘教授

明治大学国際日本学部客員教授。2008年7月まで3年間外務省で外務副報道官。元日経ビジネス記者、編集委員、ロンドン外国プレス協会会長。著書に『同盟が消える日』(編訳、ウェッジ)など。(2013年1月末日現在)

 先方が自分より弱い場合、中国は領海領土に関して露骨な砲艦外交を試みる。下級外交官まで高飛車な態度に出るらしく、フィリピン政府は業を煮やしている。スプラットリー(南沙)諸島を巡る紛争で見えた姿だ。

フィリピンで英語を
やがて移民へ

 だがヒトやカネが中国から盛んに流入中のフィリピンは強く出られない。北京はそこを見越しているだろう。

 例えばフィリピン観光省は中国人客を増やそうと懸命である。売り物は、韓国相手に成功した英語教育だ。

 中国発の海外旅行客は、もうじき年間1億人(!)を超すという。あやかりたいと、フィリピンの観光大臣アルベルト・アルバダ・リム氏は2010年7月就任以来度々中国を訪れ、中国人観光客の獲得に努めてきた。

 フィリピンへ行く観光客は多い順に韓国から74万人、日本から60万人。中国からはわずか18万7000人だ。これを増やせると見る同氏は、中国の錦江酒店にフィリピン進出を促した。中国というよりアジア最大手の同社に来てもらい、中国人の嗜好に合ったホテルを建てさせようとの算段だ。

 早速好影響を受けているのは、ダバオ市にある英語教育産業である。

 フィリピンは英語国だが豪州などより近くて安い。先に気づいた韓国から同市へ英語を学びに来た韓国人は、今や5000人という。地元紙の見立てでは中国人が早晩追い抜き1万人に達する。そして移民の呼び水となる。

 子供に母親がついて来て一族郎党が後続するのか、2010年、中国からフィリピンへの移住者(累計)は前年の3万809人から6万1372人へ1年で倍増した。2万8090人で2位の韓国に大きく水をあける。日本からは8931人に過ぎない。

 最近の椿事は、在マニラ中国大使館の一等書記官が、フィリピン政府とスプラットリーに関する協議中暴言を吐いたとして同政府の接触拒絶対象とされたことだ。一等書記官とは、いわば下っ端。フィリピン側はさすが肚に据えかねたとみえる。が、フィリピン教育産業最大の顧客となり、人口増加に連れ政治力を増すのが中国人だ。フィリピンはジレンマを深めるほかない。

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