中国はいま某国で

2011年10月11日

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谷口智彦 (たにぐち・ともひこ)

慶應義塾大学大学院SDM研究科特別招聘教授

明治大学国際日本学部客員教授。2008年7月まで3年間外務省で外務副報道官。元日経ビジネス記者、編集委員、ロンドン外国プレス協会会長。著書に『同盟が消える日』(編訳、ウェッジ)など。(2013年1月末日現在)

 選挙の洗礼がなく「金帰火来」し耕すべき選挙区を持たず、議会の拘束とも無縁な中国の指導者は、臨機に外遊できる一点に関し世界に絶する外交力を備えた人々だ。民主制の国々には太刀打ちできない。早い話が普通なら外務大臣1人で担いきれない外遊日程を、中国の場合は党政治局の有力成員で分担してさばくことができる。

 実際、中国で外交部長を名乗り、米国務長官や日本の外相が正式の相手と見なす人物は、党内序列で250位に入るかどうか。上位の実力者を繰り出せば、トップ外交をいくらでも追求できるのが中国である。

各国で元首級と会いつつ
既に36カ国訪問

 強みが如実に表れたのは、党内序列第6位だが国家副主席、胡錦濤氏を襲って来年主席になるのが確実だという習近平氏(58)の場合である。

 2009年12月、習氏は天皇陛下に拝謁した(と中国では称さないが)。直前のねじ込みで実現、横紙破りの流儀と、自国を意識してだろうが傲岸そうな態度が、日本世論を刺激した。

 あの訪日は習氏と中国にとってどの程度重みをもつものだったか。それを知るには一連の訪問先と併せ見る必要がある。日本に続いて韓国へ行き、カンボジア、ミャンマーと足を延ばした歴訪日程は、少なくとも北京の思惑として、さながら化外(けがい)地の巡撫といった趣を演出した感がある。

習近平 既に36カ国訪問
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 本コラムのため「習近平×訪問」をキーワードに調べてみたところ、別表のような足取りが浮かび上がった。

 チベットへの慰撫行脚は中国の整理だとあくまで国内案件だろうから外すとして、現職に就いてこの方、習氏は合計36の国々を訪れている。かつ「エア・アパレント(後継確定者)」の呼び声を事実上の称号として受け入れさせた結果だろう、行く先々で元首級の扱いを受けた。日本は典型例だが、スウェーデンでも国王が接見した。

 注意すべきはこれと並行して胡錦濤、温家宝両氏による首脳級外遊があり、軍や各省幹部の外国訪問もあることで、持ち札の多さは圧倒的だ。それらと習氏の動静を重ね合わせて見るなら中国外交の優先順位をより一層浮き彫りにできようが、別表を眺めるだけでも、動機のいくつかは推定できる。

 第1は資源・経済外交だ。豪州へ行くにしても日本の首脳などが足を踏み入れない北部準州へまず入り、そこから首都キャンベラへ下りる工夫を見せた。資源への関心を印象づけるためだ。アフリカ訪問動機もこの部類。

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