経済の常識 VS 政策の非常識

2011年10月17日

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 働く高齢者に対する年金である「在職老齢年金」を増額し(正確にいうと現在行われている減額を減らす)、また、年金支給開始年齢を65歳から68歳または70歳へ引き上げるという厚生労働省の提案(社会保障審議会年金部会の10月11日での審議)は若者にも高齢者にも評判が悪いようだ。

 働く高齢者に年金を増額するという案は、具体的には以下のようなものである。現行の制度では、月ごとの賃金(月給とボーナスを足した年収の12分の1)と年金の合計額が60歳~64歳で28万円、65歳以上で46万円を超えた場合、超えた分の半分、年金が減らされる。

在職老齢年金の仕組み(60~64歳)
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 厚労省の見直しでは、60~64歳で減額が始まる基準額を現行の28万円から(1)33万円に引き上げる、(2)現行の65歳以上の人と同じ46万円に引き上げる、(3)まったく減額しないという、3つの案を提出している。また、それぞれの見直しにかかる経費を、(1)で2000億円、(2)で5000億円、(3)で1兆円と試算している。

 さらに、年金支給開始年齢を68歳または70歳へ引き上げることについて、もっとも早いペースで引き上げる案では2年ごとに1歳のペースで上げて68歳にするという。

年金支給額を減らして
働く高齢者に回すべき

 さて、この案の可否を考えるためには、年金制度の3つ原則を頭に入れておく必要がある。

 まず、第1は、年金をもらうことが労働意欲を阻害しないことだ。第2に、年金を受給している世代と年金保険料を払っている世代とに不公平がないことだ。第3は、年金の受給額と保険料の支払いがバランスして勘定が合っていることだ(通常、この順番は逆にすべきだが、話の流れからこの順にした)。

 働けば年金をもらえない、または減らされるのでは、当然、働く意欲がそがれる。人口が減る日本では、高齢者も女性も若者も、皆が働くしかない。

 労働意欲をそがないようにするのは当然だが、そのためにはお金がかかる。働くと年金を減額するという制度を廃止すれば第1の基準は満たされるが、第2、第3の基準は満たされない。

 そのためにどうしたら良いかといえば、現在の年金支給額を減らして、その分を働く高齢者の年金増額に回せばよい。現在の年金支給額は46兆円であるから(国立社会保障・人口問題研究所「社会保障統計年報」)、1兆円の経費を賄うためには年金支給額を2.2%減額すればよい。

高齢者が働けば
若者の職も増える

 こう提案すれば、働ける高齢者は恵まれた人で、そのために高齢者全体の年金を減額するのは不公平だという意見があるだろう。

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