チャイナ・ウォッチャーの視点

2011年10月24日

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 アメリカの「中国に関する議会・政府委員会」は去る10月12日、中国の人権に関する年次報告を発表した。350ページにおよぶ大冊の同報告書は、中国共産党政権による人権弾圧が、この1年間でさらに悪化したことを指摘する。

中国の人権弾圧は世界で最大・最悪

 委員長をつとめるスミス共和党下院議員は記者会見で、中国の人権弾圧は世界で最大・最悪、国連の人権宣言のみならず、自国の憲法・法律にも背いており、その是正を常に求めてゆくことが不可欠だと述べた。

 この報告書では、いちいち実例をあげて、その人権弾圧を説明する。インターネットの規制強化など、すぐれて今日的な局面に応じたものもあれば、民主活動家に対する身柄の拘束や「宗教」に対する統制の増大など、いわばおなじみのものもある。

 そのうち最も気になったのは、少数民族に関わる記述である。同報告書は「少数民族の言語と文化」の問題をとりあげて、チベット・ウイグル・モンゴルの各少数民族が、「独自の言語や文化、風習を当局に奪われ、漢民族への強制的な同化を迫られている」と批判した。これもアメリカにとっては、人権弾圧になるわけである。

でも、人権弾圧は今に始まったことではない

 そうしたみかたに異をとなえるつもりはない。ただし歴史屋の立場からみると、率直にいって、何を今さら、という感じで、違和感は残る。それは目前の問題、あるいは近年にはじまったことではなく、百年以上も前からずっと、いわば歴史的に続いていることだからである。

 百年前といえば、辛亥革命。今年は1911年10月10日におこった辛亥革命の百周年にあたる。わが中国近代史研究の業界でも、学術的なシンポジウムなど、記念の行事がたくさんあって忙しい。辛亥革命は周知のように、中国で最後の王朝・清朝がほろんで、共和制の国家が生まれた、史上の重大事件である。だからそれを抜きにしては、いまの中国の存在は考えられない。記念してふりかえるのは、大いに意味がある。

 辛亥革命は近代的な政体の中華民国を生み出した。ひとまずそうは説明できても、この事件はじつに多面的で、一言で説きつくすのは難しい。その難しさがまた、以後にたどった歴史経過をもわかりにくくしている。

 だが、強いてそれを最大公約数的にまとめよ、といわれたら、それは、言行の不一致という中国史に特有の現象のひとつだと答えたい。

 建前として表明はしたけれども、本音は実行したくない、という思惑もあれば、欲求としては実施したいけれども、現実にはできていない、という局面もあろう。いずれにしても、辛亥革命をはじめとする中国の歴史を理解するには、その発言と行為の隔たりをつかむことが何よりも大切であり、ひいては現状にも、それはあてはまるのではなかろうか。

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