やはりTPPには参加すべきだ
TPP反対論に反論する

丸山淳一・読売新聞東京本社経済部長


丸山淳一(まるやま・じゅんいち)
読売新聞東京本社経済部長

WEDGE REPORT

ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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 環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加の是非をめぐる議論が再燃している。野田佳彦首相は、11月中旬に開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議までに方針を決定する意向を示しており、賛成派、反対派それぞれが相次いで集会を開くなどして動きを活発化させている。
  本稿は、読売新聞東京本社調査研究本部が発行する「読売クオータリー 2011春号」(2011年4月28日発行)に所収された、同社経済部長の丸山淳一氏によるTPP論である。TPPにまつわる論点が網羅され、わかりやすく解説されている。掲載から約半年が過ぎているが、この間、大震災でTPP議論が実質的に止まっていたこともあり、本稿の論旨は決して色あせていない。同社調査研究本部の許諾を得て、ここに転載させていただく(編集部)。

 菅政権(役職名などは所収された11年4月当時。以下同。編集部注)が掲げる「平成の開国」の議論が止まっている。肝となる環太平洋経済連携協定(TPP)への参加に農業団体や地方自治体なとが反発し、政府与党内の反対派が対話集会を開くなどして賛成論がしぼみかけていたさなかに、東日本大震災が発生した。TPP参加の是非の判断は当初予定の6月から先送りされ、農政改革基本方針のとりまとめについてもメドが立たなくなっている。

 今は震災復興に全力を傾倒すべきなのは当然だ。参加国も「日本を待つ」と言ってくれている。だが、TPPには2011年11月という“参加期限”がある。国際経済は、参加の意思を明確にしていない日本をいつまでも待ってはくれないだろう。

 震災は、「TPP反対の大義」(農山漁村文化協会編)に代表される反対派の論考がほぼ出そろい、賛成派がそれに反論しようとしていた矢先に起きた。反対論の中には、データの曲解や、実態を踏まえない解釈も多い。本稿ではTPP参加をめぐるこれまでの議論を整理しつつ、反対論の問題点を指摘したい。なお、読売新聞は社説等でTPPへの参加を主張しているが、本稿の見解は筆者個人のものであることを断っておく。

賛否が分かれる「例外なき関税撤廃」

 TPP(Trans-Pacific Partnership)とは、太平洋を取り巻く21か国・地域でつくるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の中で自由貿易圏を作るための協定だ。発端は、2006 年にシンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイの間で発効した4か国のEPA(P4協定)だったが、オバマ米大統領が09年11月の来日時に行った「太平洋演説」から、様相が一変する。

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 大統領はこの演説で、「環太平洋のパートナー諸国とともに、広範なメンバーが参加する21世紀にふさわしい高い水準の地域協定づくりを目指す」戦略を表明し、これに豪州、ペルー、さらに東南アジア諸国連合(ASEAN)に加盟するベトナム、マレーシアが賛同した。P4に5か国を加えた9か国は、11年11月にハワイで開かれるAPEC首脳会議にあわせて、広域連携協定を結ぶことを目指している。

 自由貿易を進める枠組みには、世界貿易機関(WTO)の場で行われる多国間(マルチ)交渉と、2国間(バイ)交渉がある。TPPは複数の国が参加するバイ交渉の集合体といえる。バイ交渉を経て結ぶ協定には、関税など、専ら貿易の障壁を取り除く自由貿易協定(FTA)と、投資や労働者の移動、規制なども協議対象に加えた経済連携協定(EPA) があるが、TPPは、複数の国がEPAを結ぶことで、環太平洋地域に巨大な自由貿易経済圏をつくりあげることを目指している。

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