史上最低の内定率や産業空洞化、円高不況……。明るい話題がめっきり減った経済大国・日本が世界から見捨てられつつある。猛烈な勢いで生産拠点が海外へ移転しても経済成長を成し遂げた自負が変革を妨げている。だが、それは、かつての成功体験に安住し、産業構造の転換に乗り遅れた大阪と重なる。日本は大阪の失策に学ぶ必要がある。
「100社受けたが内定ゼロ」「50社受けたが面接にすらなかなかいけない」そんな大学生が続出している。有名大学でも状況は深刻だ。文部科学省が11月に発表した10月1日時点での大学生等の就職内定率は57.6%で、「厳冬」といわれた前年から4.9ポイント低下し、過去最低を記録した。
就職市場激変のきっかけは2008年秋のリーマンショックだった。09年卒では内定取り消しが相次ぎ、10年卒からは求人数が急減。リクルート・ワークス研究所の調べによると、11年卒の大卒求人数は58.1万人で、90万人を超えていた08~09年卒に比べて約4割も減少。急減傾向は業種にかかわらないが、ボリュームとしてもっとも大きいのは製造業である(08年卒42.1万人→11年卒27.8万人)。
こんな企業も海外移転
製造業をとりまくのは、グローバル化の要請である。エポックメイキングだったのは日産自動車の新型マーチ。10月から、タイで生産されたマーチの輸入が始まった。三菱自動車も11年度に同じ方式を始める予定だ。トヨタ自動車は、次世代自動車の中核、プラグインハイブリッド車について、日本と時間差を置かずに中国でも生産を始める予定と報道されている。
日本自動車工業会によると、自動車(四輪車)の国内生産は08年から09年にかけ、1157万台から793万台へ約3分の1も減少した。海外生産は1165万台から1011万台へ約150万台しか減っていない。リーマンショックは国内を直撃したわけだ。34ページからのレポート記事にあるように、自動車各社は国内拠点の維持の難しさに悲鳴をあげている。
自動車だけではない。この1年間に報道された海外移管の事例を拾い集めると、その内容は実に幅広い。
電機業界の先端分野、プラズマや液晶といったパネル事業では、パナソニックやシャープが、国内から中国に設備を移管して現地生産を拡大する。移管設備は決して陳腐化したものではない。背景には韓国・台湾・中国メーカーとの価格競争があるとみられる。
素材関連では、鉄鋼業界が現地企業との合弁の形で自動車向け高級鋼(ハイテン)生産の現地化を進める。化学業界でも、東レが高機能フィルムの中国生産に乗り出し、旭化成は世界シェア5割のリチウムイオン電池セパレータ「ハイボア」の最終加工工程を一部韓国へ移管。「中国メーカーも生産する低価格品のみ」(東レ広報)、「顧客の製品に合わせて切り込む工程だけ」(旭化成広報)といずれも限定的な移管のようだが、「高付加価値品は国内」という常識は崩れ始めている。
製造装置関連では、アルバックが太陽電池パネル製造装置生産の大半を八戸からアジアへ移すとしている。液晶パネル製造装置については、アルバックのほか、東京エレクトロンも海外生産を強めている。