WEDGE REPORT

2010年12月20日

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 製造業に強みがあった大阪経済を襲った構造変化への対応として不適切だった政策は、次の3つに整理できる。

(1)製造業が将来も盤石と錯覚し、突出した規制をかけ、廃止が遅れたこと
(2)東京などとの都市間競争のなかで、大阪の個性を追求せずに東京と張り合うような政策を打ち出したこと
(3)財政面の制約を超えて、過剰な福祉政策に走ったこと

 この3つのポイントからみれば、現在の民主党政権が掲げる政策はどう評価できるだろうか。

民主党の政策は問題だらけ

 日本の個性であり強みなのは、大阪と同様に製造業であることに異論はないだろう。その上でまず、(1)の「製造業規制」について。第一に、鳩山由紀夫前首相が打ち出した温室効果ガス削減の中期目標(2020年時点で1990年の排出量の25%を削減)は、これまでに築き上げた日本の環境技術の優位性を過信した強すぎる規制である。このような目標では、産業界は中長期的な技術開発を行う力を奪われ、中国などの大量排出国との不毛な競争を強いられる。工場三法を上回る不適切な規制である。

 第二に、FTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)などへの取り組みも問題だ。韓国は、インド、欧州連合(EU)に続き、先般の米国との合意により、貿易総額に占める締結相手国の比率は36%に達する。それに比べ日本は16%。この温度差は、韓国企業と激しい世界競争を強いられている電機業界などの日本企業にとって死活問題である。TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への参加は結論が先延ばしされているが、乗り遅れれば、日本企業はさらに追い詰められるだろう。

 第三に、法人税減税の議論である。経済産業省の資料によれば、06~08年度の実績値で法人課税負担率を比較すれば、キヤノン38.0%、トヨタ33.1%に比べ、韓国サムスン電子は15.7%、台湾半導体メーカー・TSMCは8.3%である。マーチの生産をタイに移管した日産自動車に対し、どのような優遇政策がとられたかをみれば、日本の事業コストの高さは一目瞭然である。これらの競争条件を、まずはアジア各国のレベルに近づける努力(イコール・フッティング)が求められるだろう。

 (2)の「没個性」について。先のイコール・フッティングを達成しても、「地産地消」の合理性からいって、アジアへの移管という動きを完全に止めることはできないだろう。政策的支援によって、簡単に日本に引き戻すことができると考えるのは、大阪の「二眼レフ論」と似た失敗を招く。

 これからの激しい国家間競争の時代において、日本のとるべき戦略は、やはり製造業に軸足を置き、これまで以上に先端分野の技術開発にいそしむことであろう。となれば、不可欠なのは人材である。高度人材をどう育て、そして日本に集めるかを考えなければならない。民主党政権が給与所得控除のテーマなどで、平等性に傾斜した議論を展開しているのは気がかりだ。

 また、日本国内が先端技術開発拠点として強みを維持したとしても、組み立て(アッセンブリー)を中心とする労働集約的な仕事が大きくアジアに移管されるのは避けられないだろう。日本の豊かな中間層を形成してきたのは、アッセンブリーであり、中小企業群である。この分野に代わる雇用をいかにつくるかも重要な戦略である。

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