WEDGE REPORT

2011年12月5日

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澤 昭裕 (さわ・あきひろ)

国際環境経済研究所所長

1957年、大阪府生まれ。1981年一橋大学経済学部卒業後、通商産業省(現在の経済産業省)入省。東京大学先端科学技術研究センター教授等を経て現職。21世紀政策研究所研究主幹も務める。

 南アフリカ・ダーバンでは、地球温暖化対策の国際会議COP17が開かれている。

 交渉は2週間続くが、本稿執筆の12月4日はちょうど折り返し地点の中日であり、閣僚級折衝が始まる5日(月曜日)前日に当たる。

日本に恨み抱くEUの目論見

 今回の交渉の焦点は、2012年に第一約束期間の切れる京都議定書を今後とも継続するか、それとも新たな枠組みを目指した交渉に切り替えるかにある。京都議定書は、温室効果ガスの削減を目指した国際的な取り決めだが、米国は批准せず、途上国には削減義務が課せられていないため、世界の温室効果ガス排出量の4分の1程度しかカバーされていないという決定的な欠陥がある。しかし、途上国の目には、現在の温暖化を招いたのは、化石エネルギーを大量消費して二酸化炭素を排出しながら経済成長してきた先進国であり、その歴史的責任を感じて率先垂範して削減すべきだと映る。そう見る立場からは、京都議定書の継続が当然だということになる。一方、先進国にとってみれば、これまではそうだったかもしれないが、現状世界最大の排出国は、ここ最近急速に発展した中国(世界の約4分の1弱)だし、今後見込まれる排出増加の大半は新興途上国だと予想されている。したがって、温暖化問題の解決には、いつまでも新興途上国が削減義務を負わないという状態は看過できない、というわけだ。

 こうした根本的な対立構造が解消しない中、COP17の前半は神経戦になっている。日本は周知のように、京都議定書の第二約束期間にはコミットせず、新たな枠組みを目指す立場を明らかにしているため、途上国のプレッシャーはEUにかかってきているからだ。EUは、域内で排出量引制度を既に始めているため、それと親和性の強い京都議定書の継続に強い利害を有している。これを見透かされて、途上国から「EUは、当然京都議定書下で第二約束期間も削減していく約束をしてくれるのだろうな?」と迫られているのだ。EUは、去年までは日本は道連れにできると踏んでいたところ、去年のCOP16で、日本から「第二約束期間にはコミットしない」というポジションを強く打ち出されたものだから、見込み違いに驚いた。その結果、今や自分たちが途上国からの圧力を一手に引き受けざるをえなくなってしまったことに困惑している状況なのだ。日本に対する恨みは相当のものらしく、日本が今進めようとし、途上国での評判も高まってきている「二国間オフセット・クレジット制度」を機能させないことを狙って、いろいろと策を弄し始めている。12月3日に発表された中間的な取りまとめ文書(AWG-LCAの議長テキスト)には、そうした狙いが透けて見える文言がテンコ盛りだ。

英・ガーディアン紙の新提案に注目

 EUのヘデゴー委員(温暖化担当大臣)は、4日ダーバン市内で開かれたあるパーティのあいさつで、温暖化対策に早く乗り出した国や企業が、新たな技術を獲得し国際的な優位に立てるとし、「グリーン・レースは始まった」という表現で、同席した米国のスターン交渉代表を煽った。温暖化対策に消極的な米国をけん制したつもりだったのだろうが、それを受けたスターン交渉代表は、ヘデゴー委員のスピーチに全く触れずに、パーティ主催者との個人的な関係について述べただけ。裏ではEU-米国はどのような交渉をしているのか知る由もないが、こうした場面を目にすると、各国間の溝を埋めるには相当のエネルギーが必要だと感じる。毎年のことだが、最後の2日間が交渉の正念場となる。と、ここまで書いたとたん、英国のガーディアン紙が、EUの妥協提案(将来の新たな枠組みは法的拘束力をもつ削減義務をすべての主要国に課するが、それをいつのタイミングにするかは差異を持たせる)がインド以外の途上国の支持を集めつつあると報じた。ガーディアン紙は温暖化問題では英国政府の代弁者だが、今後この動きは注目だ。 

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