すると、GDPが増えれば、分子の社会保障給付費も増えるので比率は変わらないことになる。なお、ここでは、分子も分母も名目で考えているが、このことに異論はないだろう。物価が上がれば、分母の名目GDPも増えるが、分子の年金や人件費も増えるから、比率は変わらない。
社会保障給付の4割減で
2055年も制度が維持できる
以上の前提で予測すると、社会保障給付費と名目GDPの比率は、2010年の24.6%から2055年には54.0%まで29.4%ポイント上昇する。消費税1%でGDPの0.5%の税収であるので29.4%ポイントを0.5%で割って58.8%の消費税増税が必要になる。こんな大幅な増税が実現可能とは思えない。
高齢者一人当たりの社会保障支出を小泉政権末期(2010年)の水準に下げると、2055年の社会保障給付費と名目GDPの比率は45.4%になって2010年の24.6%と比べて20.8%ポイント上昇する。必要な消費税増税幅は20.8%ポイントを0.5%で割って41.6%となる。これも実現不可能だろう。
高齢者一人当たりの社会保障支出をバブル以前、1980年の水準にまで下げると、2055年の社会保障給付費と名目GDPの比率は31.5%と2010年に比べて6.9%ポイント上昇する。必要な消費税増税幅は、これまでと同様に計算して13.8%である。現行の5%、財政赤字を埋めるための増税を考えると、2055年の消費税は、20%余りとなる。
これなら実現可能な消費税率だろうが、1980年の高齢者一人当たり社会保障給付費は233万円、2010年は398万円だから、高齢者一人当たりの社会保障給付費を現行の水準より41.5%も減額することになる。これでは福祉をカットしすぎと受け入れられないだろうが、小泉政権末期の水準に下げても41.6%の消費税増税が必要となる。現実的な消費税増税幅と福祉支出のカット率を考えなくてはならない。
「税と社会保障の一体改革」の議論で必要なことは、2055年までの将来をはっきりと見据えることである。もちろん、見据えたところで、社会保障支出を削るのは難しい。しかし、削るしかないという認識なしに、消費税を引き上げることが責任ある態度だと議論している人たちは、どこかずれているとしか言いようがない。
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