赤坂英一の野球丸

2019年5月22日

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 シーズン中のプロ野球取材の慣習のひとつに、監督の〝試合前囲み〟がある。試合前の練習中、監督が報道陣に囲まれて取材に対応するもの。大抵はごく短い時間で、一対一の取材と違い、鋭い質問がぶつけられることもなく、ほとんど当たり障りのない内容に終始する。が、そのぶん、リラックスした監督の言葉の端々から、独自の野球観や人柄が滲み出るところがなかなかに興味深い。

(neyro2008/gettyimages)

 例えばDeNAのアレックス・ラミレス監督はいつも、〝データ重視〟で選手を起用していると強調する。今月15日の中日戦でも先発オーダーを組んだ意図をこう説明していた。

 「きょうは相手の先発が大野(雄大)だから、左打者の役割が重要になる。ウチの右打者は大野を1割程度しか打っていないが、左打者の対戦打率は2割6分だからね」

 そう言いながら、右打者のホセ・ロペスを5番に入れていることを明かした。しかも、今季のロペスは得点圏打率が大変低い。これはどういうことかと質問されると、ラミレス監督は悪びれもせずにこう答えた。

 「ロペスの得点圏打率はここまで1割7分9厘だ。今月に入ってからはゼロゼロゼロ(0割0分0厘)。(3番の右打者、ネフタリ・)ソトも(得点圏打率が)相当悪い。つまり、いま以上に悪くはならない。これからは上がっていくだけなんだよ」

 単にデータを盲信するのではなく、データの裏側に秘められた可能性やポテンシャルを読み取り、先発オーダーを組む。それがラミレスならではの野球観であり、データ利用法なのだ。ちなみに、この日の試合はロペスが逆転2ラン・ホームラン、同じ右打者の伊藤光がプロ野球人生初の満塁本塁打をかっ飛ばして中日に快勝した。

 ヤクルト・小川淳司監督の試合前囲みでは、独特の選手観を聞くことができる。現役時代は主に左投手用の右打者・外野手で、引退後はスカウト、二軍守備走塁コーチ、二軍監督を歴任した。長年、新人の発掘や育成に心血を注いできた人物だけに、選手の意外な素顔やエピソードが次から次へと飛び出すのだ。優勝した2015年に打点王となった畠山和洋が二軍でよく練習をサボっていたころ、小川監督が辛抱強く指導を続け、〝更生〟させた話はとくに面白かった。

 私生活では読書家で、京セラ・KDDI創業者、日本航空名誉会長・稲盛和夫、元聖路加病院名誉院長・日野原重明の著書を愛読している。決断に迷ったときは、何よりも人間として正しい行動を取ることが一番大切だ、ということを学んだそうだ。こういうところにも小川監督の人間性がうかがえる。

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