「GNH」幸福度を追求する
ブータンの高い経済成長率


磯山友幸 (いそやま・ともゆき)  経済ジャーナリスト

1962年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。87年日本経済新聞社に入社し、東京証券部、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長などを務める。11年からフリーに。熊本学園大学招聘教授。近著に『国際会計基準戦争 完結編』(日経BP社)。

復活のキーワード

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このところ、「脱成長」を公言する人が日本のなかでも増えてきた。
成長に代わる指標として出されるのが、国王夫妻の来日で話題となったブータンのGNH。
しかし、ブータンは成長を否定しているわけではない。成長率でみると日本よりも高い。
成長で生じる歪みを小さくして「生活の質」を高めるブータンの知恵にも着目すべきだ。

 東日本大震災が起こって丸1年。東京電力福島第一原子力発電所の事故の影響も続き、被災地の人々の生活再建はなかなか進んでいない。大震災は多くの国民にも精神的な打撃を与えた。日本人の多くが「幸せとは何か」を問い直したに違いない。

 幸せとは何か――。つまり「国民の幸福度」をどうやって測るかは、経済学にとって難しいテーマだ。経済成長こそが幸せの基盤だと考え、多くの先進国や新興国がGDP(国内総生産)を国家運営の指標として使ってきた。ところが、それに伴って生じた環境問題や資源不足、社会不安などが世界を覆うに及んで、成長だけを追い求めることへの疑問を生じさせた。そこに日本人の価値観を大きく揺さぶる震災が加わったのである。

 「成長を追い求めなくても、幸せな社会は実現できるはずだ」

 最近の日本では、そんな声が多く聞かれるようになった。国会議員や学者の中にも、「もう成長しなくていい」と公言する人もいる。パイが大きくならなくても、分配を公平にすれば皆が豊かになる、というのは本当なのだろうか。

 成長に代わる指標が語られる時にしばしば例に引かれるのが、ヒマラヤの小国ブータンが追い求める指標だ。GNH(Gross National Happiness 国民総幸福度)。1970年代からGDPではなく、このGNHを最大化することを国の政策目標としてきた。昨年11月にワンチュク国王夫妻が国賓として日本を訪れた際にも、このGNHが話題になった。

 GDPに代わる指標としてのGNHと聞くと、ブータンが経済成長に背を向けているように思われるかもしれない。GNHが日本に紹介される時も、そう説明されることが少なくない。だが現実は違うのだ。

 ブータンは九州ほどの国土に70万人の人々が暮らす小国だ。ところが、南側に隣接するのは大国インド。食糧の多くをインドからの輸入に頼る一方で、水力で発電した電力の大半を輸出する。経済的なインドへの依存度は極めて大きい。

 そのインドが猛烈な勢いで成長しているのだ。何も考えずに国の門戸を開けば、一気に経済成長の渦に巻き込まれてしまう。それではブータンの伝統も文化も、昔からの生活も一瞬にして消えてしまうだろう。

 GNHは成長を否定するのではなく、成長を抑えることで歪みの発生を小さくし、成長を持続させることを狙っているとみていい。実際にブータンのGDPは2009年に6.7%、10年には8.3%、11年も8.1%と成長を続けている。

 「失業率を低く抑え、良好なGDP成長率を保つことはとても重要だ」

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著者

磯山友幸(いそやま・ともゆき)

経済ジャーナリスト

1962年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。87年日本経済新聞社に入社し、東京証券部、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長などを務める。11年からフリーに。熊本学園大学招聘教授。近著に『国際会計基準戦争 完結編』(日経BP社)。

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