中国経済成長の終焉 2012年は冬の時代


石 平 (せき・へい)  中国問題・日中問題評論家

1962年、中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒業。1988年に来日。神戸大学文化学研究科博士課程修了。2002年に『なぜ中国人は日本人を憎むのか』(PHP研究所)を著して以来、評論活動へ。近著に『私はなぜ「中国」を捨てたのか』(ワック)、『日中をダメにした9人の政治家』(ベストセラーズ)などがある。

チャイナ・ウォッチャーの視点

めまぐるしい変貌を遂げる中国。日々さまざまなニュースが飛び込んできますが、そのニュースをどう捉え、どう見ておくべきかを、新進気鋭のジャーナリストや研究者がリアルタイムで提示します。政治・経済・軍事・社会問題・文化などあらゆる視点から、リレー形式で展開する中国時評です。(画像:Thinkstock)

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3月5日に開幕した中国の第11期全国人民代表大会(全人代)第5回会議において、温家宝首相は冒頭の政府活動報告で、今年の経済成長率目標を昨年の8%から7.5%に引き下げることを表明した。

 中国政府が自ら定める「成長目標」が7%台になるのは2004年以来8年ぶりであるから、この「引き下げ表明」は国内外で大きな波紋を呼んだ。日本の一部のマスメディアや専門家は好意的に捉えて、「中国政府は成長戦略の転換を積極的にはかった」と評しているが、果たしてそうなのであろうか。

すでに下り坂だった中国経済

 温首相の「引き下げ表明」が行われた背景を理解するのには、まず近年以来の中国経済のパフォーマンスを見てみる必要がある。実は、昨年から現在に至るまで、中国の産業と経済全体はすでに下り坂に転じている。 

 たとえば成長の象徴である自動車市場の場合、10年の全国の自動車販売台数が前年比32.44%だったが、11年は2%台にまで激減した。そして今年1月の新車販売台数は前年同月比で26%減となったと中国汽車工業協会は発表している。 

 自動車産業が不況になれば当然、鉄鋼産業にも多大な影響を与えることになる。実際、過去数十年間、中国の高度成長と共に凄まじい発展を遂げてきた鉄鋼産業は、実は10年から成長に陰りが見え始めた。たとえば鉄鋼業界の利益率は04年の8.11%をピークに下降し、10年は2.57%と、全国の工業各野の中で最低レベルとなり、11年にこの数値がさらに下がった。今年に入ってからも、鋼材市場は消費が伸び悩み、価格は継続的に下落する一方、在庫だけは急速に増えている。中国鉄鋼工業協会の発表では、1月末時点の全国26カ所の主要鋼材市場での鋼材の在庫量は1574万トンと、前月から22.02%増加したという。

鉄鋼業界トップたちの悲鳴に相次ぐ企業の倒産

 こうした中で、中国首都鉄鋼集団の朱継民董事長(会長)は「中国鉄鋼業界にとって12年は冬の始まり。全業界が一層困難な状況に備えて準備を急ぐ必要がある」と語り、もう一つの鉄鋼大手の武漢鉄鋼(集団)公司の鄧崎林総経理(社長)は「中国の鉄鋼業はすでに厳冬期に入り、それが今後5年も続く」と語るなど、中国の鉄鋼業界のトップたちは口をそろって「鉄鋼業の冬」に悲鳴を上げているのである。 

 「冬」を迎えたのは何も国有大企業だけではない。広州市の地元新聞の『広州日報』は1月3日付の記事で「輸出の低迷と国内の人件費・原材料費の高騰」が原因で、「広東省内の輸出向け服装企業の倒産ラッシュが起きている」と報じた。記事はさらに業界の人の話を引用して「年内に3割程度の企業が倒産するだろう」との予測を行った。 

 状況の厳しさは中国の全産業に行き渡っている。1月8日、国務院発展研究センター企業研究所は「中国企業発展2012年報告」を発表し、その中で「2012年は中国企業にとっては今世紀以来もっとも困難な一年となる」と指摘する。その理由としたのはやはり、「内外市場の低迷と生産コストの上昇」である。 

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著者

石 平(せき・へい)

中国問題・日中問題評論家

1962年、中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒業。1988年に来日。神戸大学文化学研究科博士課程修了。2002年に『なぜ中国人は日本人を憎むのか』(PHP研究所)を著して以来、評論活動へ。近著に『私はなぜ「中国」を捨てたのか』(ワック)、『日中をダメにした9人の政治家』(ベストセラーズ)などがある。

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