安保激変

2012年4月25日

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小谷哲男 (こたに・てつお)

日本国際問題研究所 主任研究員

1973年生まれ。同志社大学大学院法学研究科博士課程満期退学。ヴァンダービルト大学日米関係協力センター客員研究員、岡崎研究所特別研究員等を歴任。専門は日米同盟と海洋安全保障。法政大学非常勤講師及び平和・安全保障研究所・安全保障研究所研究委員を兼務。中公新書より海洋安全保障に関する処女作を出版準備中。

 4月30日に日米首脳会談が予定され、鳩山政権の迷走以来課題となっていた日米同盟の「深化」にようやく道筋がつけられる。同盟の深化に向けて、日本がどのようなメッセージをアメリカに伝えるのかが注目されるところである。

 大統領選挙を秋に控えて、オバマ政権は政権発足以来繰り返し言及してきた「アジア重視」を具体化しつつある。歴史を振り返れば、アメリカは常にアジアとの通商を重視し、アジアへのアクセスを確保するために軍事力を使ってきた。つまり、オバマ政権は本来のアメリカのアジア戦略に戻りつつある。日本は、アメリカのアジア戦略の本質を見極め、同盟の深化に取り組む必要がある。

「アジア回帰」か「アジア撤退」か

 今年1月5日、オバマ大統領が国防省まで出向き、国防長官や軍のトップと並ぶという異例な形で「防衛戦略指針」が発表された。厳しい財政状況に直面し、アメリカは中東とアジアにおける二正面作戦を放棄し、世界経済の成長センターとなったアジア太平洋地域に兵力と防衛支出を重点的に集中させていく。多くの専門家がこのように分析し、これをアメリカの「アジア回帰」あるいは「アジア基軸」と呼んでいる。 

 一方、今回の動きをアメリカの「アジア撤退」の始まりとする見方もある。どんな覇権国も衰退は免れられない。厳しい財政状況がアメリカの衰退を表しており、アメリカは次第にアジアから軍を引き上げ、将来的には海・空軍力を通じて限定的にアジアの問題に関わるべきである――「オフショア・バランシング」と呼ばれるこの考え方は、戦略論を専門とするテキサスA&M大学のクリス・レイン教授などが近年、強く主張しているものである。

「エア・シー・バトル」と「A2・AD」とは

 アメリカ軍は、中国やイランが保有するミサイルや潜水艦、サイバー兵器などの非対称兵器が前方展開戦力を危険にさらし(領域拒否)、戦力投影能力を阻害(接近阻止)し得る現状に直面し、「エア・シー・バトル(統合海軍戦闘)」という海軍力と空軍力を有効活用する概念を研究中である。

 これは、接近阻止・領域拒否(A2・AD:Anti-Access/Area Denial)環境下の緒戦において、前方展開戦力に対する被害を限定して指揮命令系統と後方支援を確保し、長距離攻撃兵器や無人兵器も駆使して戦力の前方への投影を海空軍が一体となって遂行することを目指すものであるが、これをオフショア・バランシングに備えるものだとみる専門家もいる。

アメリカのアジア戦略は建国以来、「一貫」

 果たしてどちらが正しいのだろうか。

 アメリカのアジア戦略は、建国以来一貫している。キーワードは、「通商」と軍隊の「前方展開」、そしてこれらを可能とする「アクセス」である。

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