来るか地熱発電ブーム
空白の10年を取り戻す方法

WEDGE6月号特集


Wedge編集部

WEDGE REPORT

ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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WEDGE6月号特集「来るか地熱ブーム 空白の10年を取り戻す方法」(全3章)の第1章の内容を
掲載しています。

メーカーもコンサルも海外で稼ぐ

 世界の地熱発電業界のなかで「知らない人はいない」と言われる企業が九州にある。西日本技術開発「WEST JEC」(福岡市中央区)。1967年に建設コンサルタントを行う九州電力の子会社として発足し、地熱部は78年に設けられた。地熱の開発・資源量調査、掘削工事の設計・施工管理、地下資源・設備の維持管理など、地熱発電に関して一貫した業務体制を構築している。

 競合企業はアメリカ、イタリア、アイスランド、ニュージーランドにあるが、この5社のうち、一貫体制を持つのは、西日本技術開発だけ。地熱部は人員40人の小所帯だが、2010年度の売り上げは14億円と過去最高になった。

 世界では、いま地熱発電への注目が高まっている。アメリカエネルギー情報局(EIA)は、地熱の発電量は08年に600億kWhから20年には1250億kWhに伸びると予測している。国際エネルギー機関(IEA)も、50年までに世界の地熱発電量が1兆4000億kWh、世界の年間発電量の3.5%になると予測している。

 火山国においては、すでに地熱発電による電力供給の割合は高い。IEAによると、アイスランドで25%、エルサルバドル22%、ケニアとフィリピンが17%、コスタリカが13%。

 関心を高めているのは、火山国だけではない。今年3月まで九州大学教授を務めた後、NPO地熱情報研究所を設立した前日本地熱学会会長の江原幸雄氏は「研究室の留学生は、産油国出身者が増えていた。やはり、石油が枯渇したときに対する危機意識は非常に高い」と話す。また、弘前大学北日本新エネルギー研究所の村岡洋文教授は「ドイツなどは火山国ではないにもかかわらず、地熱発電所の開発をミュンヘンで進めている」という。

 地熱発電の魅力は、なんといっても自国にある自然エネルギーを活用できることだ。さらに、太陽光や風力といった再生可能エネルギーと違い天候に左右されることがなく、設備利用率でみると、太陽光約12%、風力約20%に対して地熱は約70%にもなる。そして、発電時の二酸化炭素排出量はほぼゼロと、環境適合性に優れている。

地中から回収した蒸気で発電機を回す
(出所:ウェッジ作成)
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 地熱発電の仕組みを図式化すると図のようになる。火山が分布する地域などで、地下1000~3000メートルの場所にある高い温度の熱水や蒸気が溜まっている層(地熱貯留層)に向けて井戸を掘る。地下の熱水は、200度以上の高温だが地中の圧力がかかっているため沸点が100度よりも高い。そのため、熱水は蒸気にならない。

 この熱水が井戸を上昇する間に沸騰して蒸気が発生する。地上に設置した気水分離器(セパレーター)によって、蒸気と熱水に遠心分離して、蒸気をタービンに送り込む。このタービンの回転によって直結した発電機で電気を起こすという仕組み。蒸気でタービンを回して発電機で電気を起こすという点で、火力発電や原子力発電の仕組みは全く同じだ。

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