労働問題における世代間格差
「仕事を選り好む」「堪え性がない」
若者批判の矛盾


島澤 諭 (しまさわ・まなぶ)  総合研究開発機構主任研究員

富山県生まれ。1994年東京大学経済学部卒業 同年4月経済企画庁入庁。調査局内国調査第一課、総合計画局計量班、調査局国際経済第一課等を経て2001年内閣府退官。02年秋田経済法科大学経済学部専任講師、04年10月秋田大学教育文化学部准教授。12年4月より現職。

シルバー民主主義に泣く若者

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改めて指摘するまでもなく、わが国は世界の中でも世代間格差が深刻な国の一つである。

 国際的に世代間格差の大きさを見てみると、アメリカ51%、ドイツ92%、イタリア132%、フランス47%、スウェーデン▲22%、ノルウェー63%、カナダ0%、オーストラリア32%、タイ▲88%、アルゼンチン59%などとなっているのに対し、日本は209%である。わが国の世代間格差は、諸外国には例のない異常な水準であり、世界一深刻であることが確認できる。

 しかも、先日筆者らが行った研究(「社会保障制度を通じた世代間利害対立の克服-シルバー民主主義を超えて-」NIRAモノグラフシリーズNo.34)によると、将来世代に関しては生涯所得の半分近く、実に48.4%の純負担を負わなければならず、将来世代の生活は生まれる前から実質的に破綻していることが明らかになっている。

 結局、わが国において世代間格差が異常に大きいのは、(1)負担に比べて受益が相対的に大きいというアンバランスな社会保障制度における受益負担構造の問題、(2)少子高齢化の進行速度が早いという人口変動の問題、(3)初期時点の政府純債務が大きいという政府債務問題、(4)デフレの継続、(5)若い世代の雇用環境の不安定化、に起因するものと考えられている。

崩れつつある諸制度の前提

(図1)実質GDP成長率の推移
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 要すれば、わが国では、年齢が若いほど人口が多く、年齢が高いほど人口が少ないピラミッド型の年齢構造と高い経済成長がこれまで当然の前提とされ、社会保障制度をはじめとする諸制度が組み立てられてきた。しかし、1990年代後半以降は、少子化、高齢化の進行で逆ピラミッド型の人口構造へと転換するプロセスのまっただ中にあり、過去の前提が大きく崩れつつある。

 例えば、実質GDP成長率の推移を見ると、高度成長期には10%近くあった経済成長率は、それ以降低下し、バブルの頃でも5%程度、さらに、90年代は1%程度、2000年代後半にいたっては0.1%とほぼ横ばい、ゼロ成長となっている(図1)。同図からも明らかなように、時が経つに連れて経済成長率は下方に屈折している。

経済の成長と雇用の創出は正比例の関係

 総じて見れば、経済の成長(さらには物価上昇率)と雇用の創出との間には正比例の関係があるので、成長率が高いほど求人が多く、成長率が低いほど求人が少なくなる傾向がある。同じ問題意識で言えば、今月23日に厚生労働省の雇用政策を議論する有識者研究会は、一定の前提のもと、現在のゼロ成長が今後も続くとすれば、2030年の就業者数が2010年の6298万人から最大で845万人減少する可能性がある一方、2%成長に転じるなどした場合には就業者数の減少は213万人にとどまるとの推計を公表した。

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島澤 諭(しまさわ・まなぶ)

総合研究開発機構主任研究員

富山県生まれ。1994年東京大学経済学部卒業 同年4月経済企画庁入庁。調査局内国調査第一課、総合計画局計量班、調査局国際経済第一課等を経て2001年内閣府退官。02年秋田経済法科大学経済学部専任講師、04年10月秋田大学教育文化学部准教授。12年4月より現職。

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