WEDGE REPORT

2009年3月27日

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制度の間隙を突いた奇怪な「MVNO」

 「他人の畑を借りて収穫を待つまえに、自分がタダでもらった土地を耕すべきだ」。

 3月6日、ソフトバンクモバイルとイーモバイルが華々しく〝協業〟を開始しました。その内容とは、ソフトバンクがイーモバイルから第3世代携帯電話(3G)の電波(正しくは周波数帯域ですが、以下簡易に「電波」とします)を借りて、月額1000円~4980円でパソコン向けデータ通信サービスを開始する、というものです(参考:ソフトバンクモバイルのプレスリリース)。

 両社のサービスをうまく組み合わせているため、同じ1人の新規加入者を両社でカウントできるという“魔法”が仕込まれていることもさることながら、この“協業”には、通信事業者の本質にかかわる問題が潜んでいます。

MVNO展開は「電波の有効利用」と主張する孫正義ソフトバンク社長(2月5日の決算説明会、AP Images)

 この“協業”が2月に発表された際に、通信業界から上がったのが、冒頭のような声でした。

 電波は有限・希少で、国民共有の財産です。私たちの身の回りには、テレビ、ラジオ、無線、携帯・・・と無数の電波が飛び交っていますが、電波は無限ではありません。「○○ヘルツから△△ヘルツまではAMラジオとし、××ラジオ局にその使用権限を与える」というように、細かく国(総務省)が配分しているのです。

 携帯電話の「電波」は、現在、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクモバイル、イーモバイルの4社に割り当てられています。この「電波割り当て」のやり方は、実は国によって異なります。

 欧米ではオークション方式が一般的です。より高い金額を提示した企業に電波を使うための「免許」が与えられます。一方日本では、役所の裁量で免許を与える企業を選びます。その代わりに、計画的なインフラ整備とサービス実現を企業に義務付けます。当然、ソフトバンクも国から3Gの免許をタダでもらった通信事業者であるわけです。

 しかし今回、免許を持っているはずのソフトバンクが、イーモバイルから電波を借りることになったわけです。免許を持つ企業から、電波を借りて通信事業に参入するこの手法は、「MVNO(仮想移動体通信事業者)」と呼ばれています。MVNOはすでに広く一般化しており、たとえば、ソフトバンクの回線を借りるディズニーモバイルはその一つです。

 MVNO制度の目的はそもそも、既存の携帯電話事業者ではない、メーカーや商社、ITベンチャー企業などの異業種が既存の携帯会社から電波を借りて参入することで移動通信市場を活性化させることにありました。

 ただこのMVNOのガイドラインには、「免許をもっている企業が借りてはいけないという規定はない」(総務省総合通信基盤局・電気通信事業部事業政策課の松田昇剛課長補佐)。

 通信業界に詳しいある経営コンサルタントはこう解説します。「ソフトバンクとイー・モバイルはこの制度の隙間をついた」。

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