中島厚志が読み解く「激動の経済」

2013年9月25日

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中島厚志 (なかじま・あつし)

経済産業研究所理事長

1952年生まれ。東京都出身。東大法学部卒業後、75年日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。パリ興銀社長、日本興業銀行調査部長、みずほ総合研究所専務執行役員チーフエコノミストなどを経て現職。著書に『統計で読み解く日本経済 最強の成長戦略』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『日本の突破口―経済停滞の原因は国民意識にあり』『世界経済連鎖する危機―「金融危機」「世界同時不況」の行方を読む』(東洋経済新報社)など。

 2020年オリンピックの東京開催が決まり、さっそくオリンピックの経済効果に期待が集まっている。オリンピック開催には大掛かりな準備とインフラ等の整備が不可欠であり、長期にわたって経済を下支えすることは言うまでもない。

 1964年に開催された東京オリンピック時の景気をみても、開催1年前から潜在成長率(当時の日本経済が有していた潜在的な経済成長率)を最大2%ほど上回っている(図表1)。

図表1:オリンピック前後のGDPギャップ(日本)
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 当時の日本の潜在成長率は9%から10%程度であったと推計されるので、一時的とはいえ、この成長率をさらに2%も上振れる経済成長は、正に大型のオリンピック景気と言うにふさわしい。

 しかし、オリンピック景気もよいことばかりではない。オリンピック後、大規模なインフラ整備や白黒テレビ普及の一段落で、日本は構造不況に突入している。図表1を見ても、オリンピック後長期にわたって経済成長率が潜在成長率を下回る事態となっている。

 2020年東京オリンピックもこの構図は基本的に変わらないだろう。しかし、64年当時と2020年では日本経済の成熟度には大きな違いがあり、64年東京オリンピックの経験だけを当てはめて日本経済を推測するわけにはいかない。

 そこで、2020年の東京オリンピックが日本経済にどのような効果をもたらすのかを、1984年以降のオリンピック開催国(※)がオリンピック前後にどのような景気状態や財政状態になったのかを手掛かりに推測してみたい。

(※)1984年アメリカ(ロサンゼルス)、1988年韓国(ソウル)、1992年スペイン(バルセロナ)、1996年アメリカ(アトランタ)、2000年オーストラリア(シドニー)、2004年ギリシャ(アテネ)、2008年中国(北京)、2012年イギリス(ロンドン)。なお、1980年のソ連(モスクワ)は経済データが整わず、除外。

オリンピック景気は各国共通

図表2:オリンピック前後におけるGDPギャップの推移(1984年以降の開催国)
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 1984年以降のオリンピック開催国でも、オリンピック前後で景気に上振れ/下振れが生じている。まず景気上振れだが、平均すると開催1年ほど前から最大1%あまり潜在成長率を上振れる成長推移となっている(図表2)。

 しかも、景気上振れは開催国の経済規模や経済成熟度の如何にかかわらず起きており、アメリカのように経済規模が大きな国でも景気が押し上げられている。また、ユーロ危機の中行われた2012年ロンドンオリンピックでも、開催期の経済成長は5年ぶりの高水準を記録している。

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