中島厚志が読み解く「激動の経済」

2009年5月1日

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中島厚志 (なかじま・あつし)

経済産業研究所理事長

1952年生まれ。東京都出身。東大法学部卒業後、75年日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。パリ興銀社長、日本興業銀行調査部長、みずほ総合研究所専務執行役員チーフエコノミストなどを経て現職。著書に『統計で読み解く日本経済 最強の成長戦略』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『日本の突破口―経済停滞の原因は国民意識にあり』『世界経済連鎖する危機―「金融危機」「世界同時不況」の行方を読む』(東洋経済新報社)など。

過去最大規模で特徴ある今回の経済対策

 総事業費56.8兆円に上る経済対策(「経済危機対策」)の国会審議が4月27日に始まった。金融危機に伴って、すでに3度の経済対策が打たれているが、今回の経済対策はそれらを超える規模と幅広い内容となっている。

 今回の対策の規模は、その事業規模も、12.4兆円(GDP比2.5%)のいわゆる真水といわれる財政措置も、過去最大規模である。しかも、「経済危機対策」に過去3回の経済対策の財政措置の累計11.3兆円(GDP比2.3%)を加えると、実にGDP比4.8%の規模となって、GDP比では主要国中でも最大規模となる。

 ちなみに、オバマ政権が打ち出した経済対策は総事業費7,872億ドルで米国GDPの約5.5%と巨額であるが、09年会計年度に執行される財政支出部分はGDP比1.3%とされている(米国議会予算局試算)。また、中国の4兆元(GDP比13.3%)の景気対策にしても、ただちに財政支出にはつながらない金融措置やすでに進行中のプロジェクトなどが多く含まれており、それらを差し引いた09年の追加的な真水は1.6%程度と見られる(みずほ総研試算)。

 政府は、今回の経済対策で2009年度の実質GDPが2%程度押し上げられ、対策実施後1年間で40~50万人程度の雇用が創出されると見込んでいる。みずほ総研の試算でも、経済波及効果まで勘案すれば、実質成長率は最終的には4.3%押し上げられると見ており、09年度2%程度のGDP押し上げは十分可能と見られる。

 今回の「経済金融対策」の特徴は、その中味にもある。未来への投資として太陽光発電の電力買取制度や環境対応車への買い替え促進、デジタルTVの普及加速などが列挙されており、いままでの減税や公共事業を軸とした景気対策とは様相を異にしている。

 オバマ大統領がグリーン・ニューディール政策を打ち上げて以来、世界的に環境・新エネルギー対応を強め始めている中では、日本企業を後押しするこのような政策は不可欠であり、将来の日本経済の成長の枠組みを形成する意味でも大いに意義がある。

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