うつ病蔓延時代への処方箋

2014年3月14日

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 「Non-clinical depression」とは、臨床に至らぬうつ病と直訳すればいいのだろうか。これをロンドン大学キングスカレッジの宗未来医師とライフバランスマネジメント(LBM)研究所の渡部卓代表による共著論文で「未病うつ」と表現し、民間活力を導入しながら積極的な対応策を講じる必要性を訴えている。未病うつとは新たな概念なのか、うつ病として治療するほどではない人たちに、どのようなアプローチをしていけばいいのか。論文を掲載した経済産業研究所の関沢洋一上席研究員と共著者の渡部氏に語り合ってもらった。

関沢洋一(せきざわ・よういち)
1988年東京大学法学部卒業、1994年スタンフォード大学政治学修士修了。経済産業省資源エネルギー庁、通商政策局を経て2006年から東京大学社会科学研究所准教授。08年通商政策局に戻り12年5月から現職。主な著作物に『日本のFTA政策:その政治過程の分析』(東京大学社会科学研究所)、共著に『感情が消費者態度に及ぼす影響についての予備的研究』(行動経済学2012年)、『紹介  バイロン・ケイティのワーク』(精神医学2012年)など。

渡部 卓(わたなべ・たかし)
1956年神奈川県生まれ。早稲田大学政経学部卒、ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院MBA取得。モービル石油、AOL、シスコシステムズ、ネットエイジCOOなどを経て2003年ライフバランスマネジメント(LBM)を設立。日本産業カウンセリング学会常任理事、早稲田大学、お茶の水女子大学、東京成徳大学、中国国立・西北工業大学、武漢大学などで産業心理の講座を担当。企業、官庁等での多くの研修、講演、コンサルの実績を持つ。主な著書に『折れやすい部下の叱り方』(日本経済新聞出版社)など多数。

「未病」という言葉は辞書には存在しない

―― 未病うつ、という聞きなれない言葉を目にした時、漠然とですがイメージは理解できると思いました。ただ、それをどのように定義づけしているのか、未病うつへの対策を講じることで、新たに発症するうつ病患者を減らしていけるのか。ここに注目したいと思います。共著者である宗未来医師はロンドン在住のため、渡部さんに未病うつの概念をお聞きしたい。この論文は経済産業研究所のホームページに次のタイトルで掲載されています。

「未病うつ(Non-clinical depression)に対する低強度メンタルヘルス・サービスにおける積極的な民間活力導入の提案:趣味を実益に変えて、医療負担から戦略的事業へ」(http://www.rieti.go.jp/jp/publications/summary/14010013.html

渡部:辞書には「未病」という言葉は存在しないので、現時点で正式な日本語でないことは確か。造語です。ただ、その文字から意味することは、くみ取れるのではないかと思います。言いたいことは造語の言葉に重きを置くのではなく、造語として一般化した言葉で定義した、軽度の抑うつ状態にある人たちへの対応を図るべきということです。

LBM研究所 渡部卓代表

 一般的にうつ病と抑うつ症状を混同して語られることが多いのが現状です。厚生労働省が発表する患者調査は、入院または通院した人の数ですので、抑うつ状態の人も含まれます。この数字でうつ病患者は100万人、などと言われているのです。うつ病が増えているという数字の背景には、こうした抑うつ症状の人が増えていることが要因となっている。

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