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2014年10月20日

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澤 昭裕 (さわ・あきひろ)

国際環境経済研究所所長

1957年、大阪府生まれ。1981年一橋大学経済学部卒業後、通商産業省(現在の経済産業省)入省。東京大学先端科学技術研究センター教授等を経て現職。21世紀政策研究所研究主幹も務める。

批判が相次いでいる原子力の差額調整契約制度(CfD)は、いったいどんな制度か。原子力事業のリスクや不確実性の大きさをよく分析し、巧みに民事契約に落とし込んだ英国に学ぶことは多い。

 いまエネルギー政策関係者の間で注目されている新制度がある。英国で始まった差額調整契約制度(Contract for Difference=CfD)だ。

13年10月、英国政府と仏電力大手EDFがCfDで合意 (Bloomberg/GETTY IMAGES)

 この制度を巡り、「原子力発電はやはり高い」「原子力再推進か」との声が目立つが、これは他電源に比べ超長期の資金回収が必要となる原子力事業に予見可能性を与えるものだ。不透明性に覆われている日本の原子力事業に不可欠な仕組みだと筆者は考えるが、そもそも原子力をどの程度維持するのかという大問題に答えを出すことが先決であることは変わらない。

 英国は約20年前に電力自由化を始めたが、その結果、市場価格の変動リスクが大規模な電源投資を阻んでしまい、とうとう近い将来の停電を心配しなければならないくらい、電力供給力の不足が目立つようになった。同時に、英国は温暖化目標達成のためにより安価にCO2を削減できる低炭素電源を開発する必要に迫られてきた。

電力自由化から20年
原子力を再評価する英国

 これら両方の問題を一挙に解決できるとして、見直されたのが原子力だ。英国では一時北海油田から天然ガスが豊富に産出されたために、自由化後ガス火力が次々と建った。ところが、その後の天然ガスの枯渇や風力発電優先によりガス火力の稼働率は低下し、その競争力はみるみる喪失。そのうえ、ここ最近ではウクライナ情勢の悪化によって、天然ガスの地政学的リスクも強く意識され始めているという事情がある。こうした事情に加えて、後にも触れるように英国の原子力安全規制に対する国民の信頼も厚いため、英国の世論調査では、福島第一原発事故以降にむしろ原子力の支持率が上がったとされている。

差額調整契約制度が適用された英国南西部のヒンクリーポイントC原発は、B原発(写真)の隣接地に新たに建設される(Reuter/Aflo)

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