ベストセラーで読むアメリカ

2009年7月22日

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■今回の一冊■
HORSE SOLDIERS
  筆者Doug Stanton, 出版社Scribner, $28.00

HORSE SOLDIERS
NYタイムズ・ベストセラーリスト
単行本ノンフィクション部門
9週連続ベスト10

豊富な取材が描き出す、ひとりひとりの兵士と家族

 アメリカで起きた同時テロの直後に、アフガニスタンに極秘裏に潜入し、タリバン勢力を掃討した特殊部隊の現地での軍事行動を追ったノンフィクションだ。「おそらく生きて帰ってはこられない」という覚悟を胸に、未知の地であるアフガニスタンに、10人余の少人数のチームで向かう隊員たちの勇敢な姿に、多くのアメリカ人は感動を覚えるはずだ。

 特殊部隊の隊員たちに直接取材し、現地でアメリカが遂行した対テロ戦争の実態を克明に描き出す取材力はさすがだ。隊員たちの家族にも話を聞いており、極秘の任務のために、どこにいるのかさえ分からない夫たちの帰りを待ちわびる妻たちの日常も胸を打つ。アメリカ陸軍から異例の協力を得て取材を進めた本書では、驚くほどの知られざるディテールの積み重ねで、秘密のベールにつつまれていた特殊部隊の活動を明らかにする。

 ある若手の隊員は新婚旅行でタヒチに滞在中、テレビで同時テロが起きたことを知り、任務に備えて急きょ帰国する。特殊部隊の隊員たちの家族もみな、テレビで同時テロを知って真っ先に、夫が、あるいは父親が戦場に行くことになると覚悟を決めたことを語る部分は痛切だ。

なぜこのタイトルか

 2001年9月11日の同時テロから、約1カ月後に特殊部隊はアフガニスタンに潜入するが、慌てて必要な物資を集めたため、部隊が本拠を置く基地フォートキャンベル(ケンタッキー州)近くの大型スーパーから乾電池が売り切れたり、アウトドアショップでテントなどの商品が棚から消えたりする。段ボール箱にドル紙幣を詰め込んで単身、現地に先行して潜入するCIAの工作員たちの働きも興味深い。

 ウズベキスタンに設けたベースキャンプから、特殊部隊員をアフガニスタンまで運んだ空輸部隊「ナイトストーカー」の大型輸送ヘリのパイロットたちにも取材しており、標高の高い山が多いアフガニスタンではレーダーが使いものにならず、決死の夜間飛行を決行していたことなどにも驚かされる。

 タイトルを直訳すると「騎兵隊」となる。最先端の装備を誇るアメリカ軍だが、アフガニスタンの反タリバン勢力「北部同盟」と現地で合流した特殊部隊の隊員たちは、現地の兵士たちと同じように、険しい山岳地帯の小道を馬に乗って移動することを余儀なくされる。タリバンとの戦闘を始める前から難題に直面したことになる。アメリカの兵士は軍隊では乗馬訓練を受けていなかったのだ。

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