WEDGE REPORT

2015年5月18日

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金子将史 (かねこ・まさふみ)

政策シンクタンクPHP総研首席研究員

東京大学文学部卒業。松下政経塾塾生等を経て現職。著書に『パブリック・ディプロマシー戦略』(共編著、PHP 研究所、2014年)など。

2015年4月29日、安倍首相は日本国総理大臣として54年ぶりに米国議会の壇上に立ち、演説を行った。54年前の池田勇人首相、58年前の祖父・岸信介首相などに続き史上4人目。上下両院合同会議として米国国会議員が一堂に会した場においては、史上初だった。
戦後70年であることも手伝い、演説前には、慰安婦問題に対する謝罪は入れるのかといった「歴史認識」に関する表現ばかりに注目が集まっていた。
しかし、当の安倍首相の口からは「強い日本への改革」、「戦後国際平和を米国と築いた自負と維持への決意」、「女性の人権が侵されない世の中の実現」、「積極的平和主義」、「日米同盟の堅牢さ」など、未来に向けた強い意志が伝わる文言が発せられ続けた。
演説の表面的な文言からだけでは読み取れない安倍首相が発信したかったメッセージとは果たして何だったのか。そのメッセージを米国政府、国会議員、メディア、民衆はどう受けとったのか。日本はこれからどのように振る舞っていくべきか。3人の識者に縦横無尽に論じてもらった。

 米上下両院合同会議における安倍晋三首相の演説を、列席の議員や傍聴者は十数回に及ぶスタンディング・オベーションで包みこんだ。演説後、ベイナー下院議長は「この日が我々の同盟の歴史における誇らしい転機だったと将来世代は振り返るだろう」との声明を発表した。

 確信犯的な批判は別として、首相の演説は、米議会や米国のアジア政策コミュニティでおおむね好意的に受け止められた。

 レーガン大統領のスピーチライターだったダナ・ローラバッカー下院議員は、首相は歴史認識問題を威厳をもって語り、演説は「Aプラス」、との高い評価を報道陣に示した。また、ウォール・ストリート・ジャーナルの解説記事は今回の演説を「良質のパフォーマンス(a vintage performance)」と評している。

 今回の首相演説では米国の聴衆の心に響く工夫が随所にみられた。冒頭、駐日大使に転じた議会の重鎮達や故ダニエル・イノウエ上院議員の名前を挙げたことは、米国議会こそが日米同盟を力強く支えてきたことに目を向けさせた。米国留学等の個人的エピソードも彩りを添えた。

日米の和解を見せつけた

 とりわけ首相が、WW2メモリアルを訪れた際の「深い悔悟」の念を語り、「先の戦争に斃れた米国の人々の魂に、深い一礼をささげる」と述べた場面は聴衆の心を揺さぶった。議場には目を潤ませる議員の姿もみられたという。

 硫黄島で戦ったスノーデン元中将と栗林忠道中将の孫である新藤義孝前総務大臣の握手も、勝者と敗者の別を乗り越える象徴的な演出だった。日米首脳共同声明における「和解の力を示す模範」との表現と相まって、日米の和解の底堅さを示す迫力があった。

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