オトナの教養 週末の一冊

2015年6月19日

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中村宏之 (なかむら・ひろゆき)

ジャーナリスト

1967年生まれ。91年、慶應義塾大学経済学部卒、読売新聞東京本社入社。ロンドン特派員、米ハーバード大学国際問題研究所研究員、経済部デスク、調査研究本部主任研究員などを経て2017年4月より読売新聞東京本社メディア局編集部次長。『御社の寿命』、『世界を切り拓くビジネス・ローヤー』、(いずれも中央公論新社)など

 「勝負の極意」ともいうべき、エッセンスが詰まった本である。筆者(中村)は麻雀を全くやらず、正直なところルールも良くわからないのだが、不平等な牌の配分の中から勝利を引き寄せるという麻雀の勝負の醍醐味は理解できる気がする。またビジネスには「勝負所」があって、そこをどう乗り切って勝ち抜くかで企業の盛衰が決まるということは、長い経済記者経験を通じて目にしてきたことである。著者は伝説の雀士とIT企業の社長という組み合わせだが、「勝負事」という観点からは相通じる点が驚くほど多い。

『運を支配する』 (桜井章一、藤田晋 幻冬舎新書)

 自分の仕事に引き寄せて言えば、記者が特ダネをとれるか、とれないかという競争が報道の世界にはある。世の中の関心を集めているニュースの新たな事実関係や節目のタイミングなどについて、報道各社のどこがいち早くそれを報じることができるのか。それぞれの取材力がシビアに試される場面である。漫然と過ごしていて偶然にネタがとれることなど、自分の経験に照らしてもほとんどないといっていい。

 それよりも、ニュースをとるためには、取材先との関係を構築し、あらゆる方法を使って情報を集め、さらに勉強も含めた様々な準備をしてニュースの展開や本質への理解を深めておくことが大切である。こうしたプロセスを踏むことで、はじめて特ダネをとる「磁場」に入ることができ、「勝負所」のタイミングで報じる条件ができるのだと思う。

 担当する分野でこのあたりの事情は微妙に異なるのだろうが、少なくとも自分はそう思ってこれまでやってきた。そこでニュースを取れるか、取れないかは運が作用する面も多分にあるが、それはまさに「磁場」に入っているかどうかで全く展開が違ってくると思う。自分のこうした経験もあるので、本書の記述に関しては非常に興味深く読んだ。

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