オトナの教養 週末の一冊

2015年8月26日

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本多カツヒロ (ほんだ・かつひろ)

ライター

1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/

 上野や柏、水戸…常磐線と言えば、どんなイメージがあるだろうか。「コモディティの供給地」と答えるのは、筑波大学大学院人文社会科学研究科の五十嵐泰正准教授。常磐線の各駅を沿線と関わりが深い様々な著者が書き連ねたのが、同氏と福島大学うつくしまふくしま未来支援センター特任研究員の開沼博氏が責任編集を担当した『常磐線中心主義(ジョーバンセントリズム)』(河出書房新社)だ。今回、五十嵐氏に「なぜ常磐線を語るキーワードがコモディティなのか」などを中心に話を聞いた。

ーー東京近辺では東急線や小田急線沿線の開発について多く語られてきましたし、メディアなどで目にする機会も多いのでイメージしやすいのかなと思います。しかし、常磐線はなかなかイメージが沸かないのが実情かと感じます。今回はなぜ常磐線に注目したのでしょうか?

『常磐線中心主義(ジョーバンセントリズム)』(著・編集:五十嵐泰正・開沼 博、河出書房新社)

五十嵐:たとえば東海道線や中央線に関する本ならば、全国区でも売れるかもしれませんが、常磐線となるとあまり印象がないのは間違いないだろうと思います。 

 この本をつくろうと思ったキッカケは大きく3つあります。1つ目は私自身の個人的な事情で、上野について長く研究していて、また生まれや現在の住まいも柏で、さらには筑波大学に勤務しているので、常磐線や常磐自動車道でほとんど完結しているような人生なんですね(笑)。郊外論や地方論への関心が高まり始めた2000年代中盤福島県いわき市の常磐ハワイアンセンターを舞台にした映画『フラガール』や、茨城県下妻市を舞台にした映画『下妻物語』が話題になり、そういう常磐線沿線付近の表象をつなげたら面白いのではないかというアイディアをぼんやりと思いついたのが最初でした。

 2つ目は、あとでも触れることになると思いますが、やはり3.11ですね。沿線の海岸沿いが津波で甚大な被害を受け、福島第一原発事故が起こった。柏を中心とした千葉県内の常磐線沿線、東葛地域は放射能のホットスポットになった。この4年間、地元の柏や、福島県の特にいわき市にも関わって色々な活動をする中で、共編者の開沼さんとも出会い、常磐線沿線を描くというぼんやりしたアイディアが、現在の日本社会に投げかけるべき社会的なメッセージを持ったものになってきたのを確信するようになりました。

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