World Energy Watch

2015年10月15日

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 フォルクスワーゲン(VW)のディーゼル車が米国の排ガス規制値をクリアするために、排ガスの試験時にのみに機能するソフトウエアを搭載していたことは、世界中のマスコミにより報道された。米ニューヨークタイムズ紙、英ガーディアン紙などその国を代表する新聞も、同社の先行きなどを連日のように報道し、日本の有力紙を含め世界のマスコミが、挙って企業城下町であるヴォルフスブルクの現状を伝える事態になっている。

 規制値以上の窒素酸化物(NOX)が排出されることにより、健康被害が増加する問題が指摘されているが、車の排ガスはNOXだけではない。地球温暖化、気候変動を招く二酸化炭素(CO2)の排出も大きな問題だ。CO2の排出量に関する数字は、燃費として自動車のカタログに示されている。実際の走行では試験時とは条件が異なるために燃費が悪化することが知られているが、その乖離の度合い、つまりカタログ値の燃費の信頼度も自動車会社、車種により異なることが欧州では指摘されている。

 欧州で販売されている乗用車の半分近くはディーゼル車だ。今後NOXの規制値をクリアするために燃費を犠牲にする可能性もある。燃費が悪化すれば、CO2の排出量が増える。車からのCO2排出を効率よく削減、あるいは抑制する日本メーカが得意とするハイブリッドと電気自動車の出番が増える事になるかもしれない。

日本で大人気、TOYOTAのハイブリット車「プリウス」の出番が増えるのかもしれない。2015年12月に4代目新型「プリウス」が発売予定(画像:Getty Images News)

米国のNOX規制とVW車の実測値

 NOXは、石炭、石油などの燃焼により排出されるが、車の場合には燃焼方法と排ガス処理方法の違いにより、ガソリン車よりもディーゼル車から排出される量が多くなる。NOXは呼吸器系統の健康被害を発生させ、雨に溶ければ硫黄酸化物(SOX)と同じく酸性雨となり、植生に影響を与える。

 米国では、1980年代に中西部地区を主に酸性雨が大きな問題となり、隣国カナダからも抗議を受ける事態にまで発展した。酸性雨対策のため米環境保護庁(EPA)は、90年の大気浄化法の改正により石炭火力発電所からのNOXとSOXに規制値を設け、排出量取引制度を導入した。乗用車、ミニバンなどからのNOXについては、2004年の改正で車の使用期間を通し、平均で1マイル当たり0.07グラム(g)-0.043g/キロ―を超えてはならないと定められた。この基準は欧州委員会の15年式車へのNOXの適用値0.08g/キロと比較しても厳しい値になっている。

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