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2009年10月19日

鈴木中人(すずき・なかと)
1957年生まれ。81年にデンソー入社。92年に長女が小児がんを発病し、95年に死去。それを機に「いのちの授業」を始め、2004年に会社を早期退職して翌年「いのちをバトンタッチする会」を設立。学校・行政・企業等での講演や研修には、これまでに約9万人が参加。
(撮影:田渕睦深)

 「生き方も働き方も多様化し、自分はどう生きたらいいか、どう働いたらいいかを見失っている人がたくさんいます。目先のことを考えがちですが、自分にとって大切なものは何かという原点が重要だと、私は思います。何が大切かは、いのちという言葉から見えてくる。でも今、いのちを見つめる感性が薄れてきています」

 いのちは大事なものだと頭でわかっていても、実感しながら生きているかと言われると心もとない人は多いだろう。いのちという言葉から感じとれることが失われつつあるから、自分はどう生きるかが見えなくなり、生きること自体が軽くなっている。いのちをバトンタッチする会の代表の鈴木中人は、そう考えている。

 鈴木は、小中学生や企業人らに「いのちって何だろう」と問いかけ、そこから何が大切か、どう生きるかを考えてほしいと、「いのちの授業」を続けている。大手自動車部品メーカーに勤めていた鈴木は、企画部門の次長だった2004年、46歳で会社を辞めて翌年に会を設立した。小児がんで亡くした長女のことを伝えようと考えたからだ。

いのちからくるキーワードを感じ取ると、
生きることが肯定的になる

 いのちを見つめると、どう生きるかを考えることにつながるのは、なぜですか?

 「いのちには、『つながっている』『支えられている』『限りある』といったキーワードがくっついています。そこから『尊厳を持つ』『感謝する』『一生懸命』など、人と関わって生きる上で大事なことに気づきます。例えば、自分のいのちは自分だけのものじゃないという感覚を持つのと持たないのでは、生き方がまったく違う。いのちからくるキーワードを感じ取ると、生きることが肯定的になると思います」

 「ただ、『いのちは、つながっている』って、筆記試験でも書けますよね。いのちを、頭で理解しようとする前に、体験からくる実感によって、いのちを大切にする感性が育まれることが大事で、そのカギとなるのは家族です」


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