韓国の「読み方」

2015年12月17日

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澤田克己 (さわだ・かつみ)

毎日新聞記者、前ソウル支局長

1967年埼玉県生まれ。慶応義塾大法学部卒、91年毎日新聞入社。99~04年ソウル、05~09年ジュネーブに勤務し、11〜15年ソウル支局。15年5月から論説委員。著書に『「脱日」する韓国』(06年、ユビキタスタジオ)、『LIVE講義 北朝鮮入門』(10年、東洋経済新報社、共著)、訳書に『天国の国境を越える』(13年、東洋経済新報社)。毎日新聞サイト内に主な記事などを集めた個人ページ「アンニョン!@ソウル」がある。近著に『韓国「反日」の真相』(15年、文藝春秋)。

 ソウル中央地裁は17日、朴槿恵大統領の名誉を毀損したとして起訴された産経新聞の加藤達也・前ソウル支局長に無罪判決を下した。「言論の自由」を認めた当然の判決だが、そもそも起訴自体に大きな問題があった。しかも、韓国外務省が法廷に善処を要請したことには、三権分立の観点から疑問があると指摘せざるをえない。無罪ではあっても、すっきり「良かった」とは言いづらいのである。

韓国大統領が法的措置を多用する傾向は強まっている(Getty Images)

 繰り返しになるが、そもそも加藤氏が書いたコラムの内容いかんを問わず、権力者について書いた記事を理由に刑事訴追を行うことは民主主義国家ではあってはならないことだ。特に外国メディアの記者を標的にしたことは国際社会の関心を呼ぶことになり、韓国のイメージに悪影響を与えた。

 名誉毀損訴訟に詳しい韓国の弁護士によると、青瓦台(大統領府)がメディアに対する法的措置を乱発するようになったのは盧武鉉政権(2003〜08年)からだ。保守的な大手メディアを敵視した盧大統領が弁護士出身だったことや、腹芸の苦手な盧大統領の性格が影響したのかもしれない。

 法的措置を多用する傾向は、李明博政権(2008〜13年)で強まり、朴槿恵政権(2013年〜)でさらに拍車がかかった感がある。「産経だけではない」のである。

 実際には不起訴処分となったり、起訴されても無罪になったり、民事の損害賠償請求訴訟でも賠償を認められなかったり、ということが少なくない。この点は、韓国司法が一定の歯止めになっていると評価できるだろう。ただ、そもそも権力者が法的措置を乱用すること自体が大きな問題なのだ。

 国連のB規約(市民的および政治的権利)人権委員会は先月、韓国で政府批判をした人を名誉毀損の罪で訴追し、重い刑を科すことが増えていると懸念する報告書を採択した。これが国際標準の考え方だと言えるだろう。なお、人権委は各批准国について順番に審査をして報告書を採択している。

朴槿恵政権2年半で名誉毀損の法的措置22件

 韓国のNGO「参与連帯」は今年9月、「朴槿恵政府の国民口封じ事例22選」という報告書を発表した。朴槿恵政権が任期5年の折り返し点となった8月下旬までの間に、朴大統領や政府機関、政府高官に対する名誉毀損で法的措置が取られた22件に関する報告書だ。加藤氏の起訴も入っている。

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