WEDGE REPORT

2016年3月25日

 あるファンドの最終面接に、同じ会社出身の若手が5人も残っているらしい─。金融界隈でこんな噂となって話題になっている“会社”とは、2兆円超の投資能力を誇る日本最大の官民ファンド、産業革新機構である。

 シャープ支援案で、台湾の鴻海精密工業に競り負けた革新機構。その内部でいま何が起きているのか。

シャープ支援策について記者会見する志賀俊之・産業革新機構会長兼CEO(JIJI)

「再生機構化」する産業革新機構

 鴻海とのシャープ争奪戦で、革新機構はいくつかの「悪手」を打った。

 その一つが本体出資だ。巨額の財投資金が裏付けとなっている革新機構には、民業圧迫や国民負担といった批判をかわすための“歯止め”がある。革新機構の経営陣が折に触れて宣言してきた「再生はやらない」がそれだ。

 ダイエーを手掛けた産業再生機構や、JALを扱った企業再生支援機構と同じこと──公権力を使って金融機関に債権放棄させ、身綺麗にしてV字回復させる──不良債権がのしかかる危機時だから許された救済策はもう使えない。平常時たる今、産業を革新するための成長資金でなければ公的資金の使途としては許されない、というのが革新機構の建付けだった。

 シャープから液晶部門を切り出し、革新機構が35%の株式を握るジャパンディスプレイ(JDI)と合併させ、シャープ本体に残る白物家電は東芝の同部門とくっつける。この“ドミノ倒し”であれば、シャープという「企業」の救済・再生ではなく、液晶、家電という「事業」の再編であり、頭数が減ることで成長も見込める。であれば成長資金だから、革新機構が手がけてもいいというロジックだった。

 実際、革新機構の提案は2015年までは液晶分離が前提になっていたがヌエのようなシャープ経営陣に鴻海との天秤にかけられるうちに、シャープ本体への出資に突っ込んでいく。「本体出資でまず主導権を握る。経営権を取ればすぐ液晶を分離できる」。この苦しい理屈は『官僚たちの夏』ばりの経済産業省“介入派”にも亀裂を生んだ。

 しかも、この数年の無策でシャープのバランスシートは傷み切って、事実上の銀行管理状態にあった。みずほ銀行と三菱東京UFJ銀行のもつ優先株を紙クズにし、債務の一部を株式化(DES)するという機構案を見た銀行サイドは、優先株を買い取ってくれる鴻海案に流れていった。「とくに青色の銀行が機構案を拒絶した」(関係筋)。

 この機構案は、会社更生法や事業再生ADRといった法的枠組みこそ使わないものの、「銀行を泣かせる」のがキモであり、再生機構の手法に限りなく近い。さらに、革新機構はもう一つの「悪手」を打っている。

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