チャイナ・ウォッチャーの視点

2009年11月25日

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 11月15日から18日まで中国を訪問したアメリカのオバマ大統領は国賓でありながら、招待国の中国の「言論規制」にかかる羽目になった。

 訪中2日目の16日、オバマ大統領は上海市内で現地の大学生など中国の若者との対話集会に出席した。大統領はここで、中国訪問中の最初にして最後の演説を行い、大学生たちからの質問にも丁寧に答えた。

 その中で大統領は、「中国が成し遂げた人類史上前例のない業績」に対して賛辞し、「アメリカは中国から多くのことを学ぶべきだ」といって中国のことを持ち上げた。その一方で、「我々の政治制度を押しつけるつもりはないが、我々の原則が米国だけに当てはまるものとは思っていない」と切り出して「表現の自由、信教の自由は普遍的権利」とも指摘した。 

 オバマ大統領はさらに、「米国、中国、あらゆる国の少数民族や宗教的な少数派にもこれらの権利は与えられるべきだ」とも語った。そして中国国内でのインターネット規制を念頭に、「私は開かれたインターネット利用の強い支持者だ」と主張した。

オバマ大統領の問題発言を封印した
巧妙なメディア戦術

 「表現の自由、信教の自由」などの「普遍な権利」や「少数民族の権利」に関するオバマ大統領の発言は当然、それらの「権利」がまったく保障されていない中国の現状に対する批判であり、中国への「状況改善要求」であるとも捉えるべきであろう。が、当の中国政府にとっては、それは当然、聞きたくもない言葉であり、国民に知られたくもないメッセージだった。

 それゆえ、中国政府は国賓であるはずのオバマ大統領の発言の封じ込めに躍起になっていた。

 地元テレビ局による対話中継や16日夜の中国中央テレビによる全国向けの再放送を行った際、当局は大統領の発言に中国側が用意した同時通訳の中国語の音声を大きくかぶせて英語の肉声が伝わりにくい“工夫”をこらした。

 新華社によるオバマ大統領の演説の翻訳全文では、17日朝の段階で「ネット検閲」に関する段落がすっぽり抜け落ちた。17日夕の段階で問題部分の発言はなぜか復活掲載されたが、翻訳には一部あいまいな点も残った。

 17日の人民日報を開くと、オバマ大統領が上海の対話集会で行った演説の内容や対話のやり取りがまったく掲載されていないことに気がつく。「オバマ大統領は上海で大学生らと対話集会に出席した」と簡潔に報じた以外に、共産党機関紙の同紙は、オバマ大統領の「問題発言」を完全に黙殺した。

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