ベストセラーで読むアメリカ

2009年12月22日

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■今回の一冊■
GOING ROGUE
 筆者Sarah Palin, 出版社HarperCollins, $28.99

 2008年のアメリカ大統領選で共和党の副大統領候補として一躍、話題の人となった前アラスカ州知事のサラ・ペイリンの自伝が、ベストセラーリストのトップを走り続けている。ニューヨーク・タイムズ紙の週間ベストセラーリストのノンフィクション部門で、11月に発売してすぐに1位で初登場し、直近のリスト(12月18日付ウェブ版)でもトップを4週連続で守り独走している。

オバマ支持率50%割れを尻目に
「ならず者が行く」?

 本の好調な売れ行きは、次期大統領選への出馬が常にとりざたされるほどのペイリンの人気の高さを示す。同時に、世論調査での支持率がついに50%を割り込んだオバマ大統領への不満の高まりも追い風だ。小さな政府を志向する保守派を自認するペイリンは本書の随所で、オバマ批判を展開している。いわゆる反オバマ本が09年のアメリカのベストセラーリストの上位を席巻したが、オバマ政権に不満を高めたアメリカ国民が読んで溜飲を下げているという意味では、本書も反オバマ本といえなくもない。

 ペイリンの人気の源はまず、アラスカという大自然に囲まれた辺境の地で、5人の子供を生み育て普通の母親として苦労してきた庶民性にある。くわえて、若いころからの共和党員でありながら、時に党の大物にも楯突く物言いや行動をとる点が、特定の利益団体の都合を優先する既存の政治家に辟易してきた民衆の心をつかんでいる。

 地元の市長やアラスカ州知事を務めてきたとはいえ、いわゆるプロの政治家ではないため、しばしば失言と批判される率直な語り口も、多くの共感を集めている。本書のタイトルが直訳すると「ならず者で行く」というのも、ペイリンの人柄をそのまま表しておりうなずける。

 ペイリンの生き方そのものが、保守派としての考え方を体現している点も見逃せない。鹿狩りが趣味のペイリンは銃規制に反対。中絶にも反対で、ダウン症であることを事前の診断で知りながら、迷わず5番目の子供を出産。国際社会の中での強いアメリカを理想としており、長男は大統領選のさなかにイラクに出兵していた。ペイリンの生き方には、アメリカの保守派の心を捉える要素があふれている。

 この自伝は、自身の半生を描いた前半部分と、08年の大統領選での選挙キャンペーンの混乱について描いた後半部分に分かれる。前半はスポーツ好きの一家の中で、バスケットボールなどに熱中したこども時代。奨学金を手に入れるため、地元の美人コンテストに出て優勝した大学生時代。そして、市長、州知事として地域住民のために努力してきたことを記す。これといって、衝撃的な告白があるわけではなく、やはり全米メディアに攻撃を受けることになった大統領選の選挙キャンペーンの内幕を書いた後半部分が圧倒的に興味をそそる。

 ただ、ペイリンが高校時代に大統領に就任したロナルド・レーガンがアメリカを新たな栄光の時代に導いたことに感動し、その後、レーガンを崇拝している点などが、典型的なアメリカの保守層のメンタリティを物語っており参考になる。

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