トップランナー

2010年3月7日

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 「メジャーリーグを必死に目指す若い選手たちと一緒に汗を流すと、野球が好きでボールを夢中で追いかけていた、子どもの頃の気持ちを思い出します。僕は今でも野球小僧なんだって気づくんですよ」

 かつてプロ野球の大洋ホエールズ(現・横浜ベイスターズ)の名ショートとして鳴らし、ゴールデン・グラブ賞(各ポジションで最も守備の優れた選手に与えられる賞)を8年連続で受賞、現役引退後は日本の球界で監督やコーチを歴任した山下大輔。まもなく58歳になる山下は、ロサンゼルス・ドジャースのマイナーリーグの守備コーチとして、3月から米国アリゾナで2年目のシーズンを迎える。

体を動かして教えるのは
あと何年もできないな

山下大輔(やました・だいすけ)
1952年生まれ。73年ドラフト1位で大洋(現・横浜)入りし、守備の名手として活躍。横浜ヘッドコーチ、同監督、楽天ヘッドコーチなどを歴任し、2009年から米ドジャースのマイナーリーグ守備コーチを務めている。  写真:田渕睦深

 メジャーの下部組織であるマイナーは、6階層にわかれる。山下がコーチを務めるのは、その最下層のルーキーリーグ。ドミニカやベネズエラなどラテンの国から渡米してきた選手も多い。山下は、がむしゃらになって昇格を目指す20歳前後の選手たちと約8カ月間を共にし、気温45度にもなるグラウンドでノックのバットを握り、グラブさばきを見せてきた。

 どうして米国に?

 「米国は、選手が持てるものを実戦の中で見て、上に引き上げるのが一般的なスタイルです。選手を育てようという部分は少ない。しかし、若手の育成が大事だと考えたドジャースは、日本人のコーチを探していました。ワールド・ベースボール・クラシックなどで、日本選手の守備の安定度が認識されたこともあるでしょう」

 「声がかかった時、僕は二つ返事で引き受けました。好奇心旺盛というのもありますが、年齢的には自分の体を動かして若い選手に教えるのは、あと何年もできないなと。日本人が、メジャーのチームからのオファーでコーチ契約を結ぶのは、おそらく初めてだと思います」

 ルーキーリーグの選手は、給料はほとんどなし。食事と寝る場所とともに野球をするチャンスを与えられたということだ。18歳から21、22歳で、プロ入り1~2年目。ダメなら朝いきなりクビを通告されるという緊張感の中で、選手たちははるか遠くにメジャーの頂を仰ぎながら、上にあがろうと猛烈に練習する。

 「ルーキーリーグには3年もいられませんから必死です。巨大なピラミッドの底辺で、アメリカンドリームに挑戦しているんです」

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