海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年11月4日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

 今回のテーマは「オクトーバーサプライズ」です。米大統領選挙では投開票日の約1カ月前に起きる選挙結果に多大な影響を及ぼす驚くべき出来事をオクトーバーサプライズと呼んでいます。投開票日の11日前に、ジェームズ・コミー米連邦捜査局(FBI)長官は民主党ヒラリー・クリントン候補が私用メールで公務を行っていた問題に関して突然捜査再開を公表しました。本稿では今回の米大統選挙において最大規模のオクトーバーサプライズと呼ばれているFBIによるメール捜査再開の影響について分析します。

クリーブランドのクリントン選対(筆者撮影)

地上戦VS.オクトーバーサプライズ

 地上戦の柱は戸別訪問です。筆者は研究の一環として再度中西部オハイオ州クリーブランドに入り、戸別訪問を実施しています。前回と同様、クリーブランド西部に住むアフリカ系の低所得者層を中心に期日前投票を促しています。

 クリントン陣営のボランティアの運動員並びにインターンの学生は標的となっている有権者の家を訪問すると、2008年及び12年の米大統領選挙でオバマ大統領が激戦州オハイオを制することができたのは、支持者が期日前投票に出向いたからだと説明をしています。11月8日の投開票日に投票を希望する支持者には「当日は列ができます。待ち時間が少ない期日前投票をお勧めします」と語り説得するのです。さらに、カレンダー及び期日前投票の時間帯が印刷されたコミットメントカード(お約束カード)を取り出して、投開票日の前に都合がつく日がないのか尋ねます。この手法はかなり効果を上げています。

 クリントン陣営が期日前投票の促進を最重要課題に据えている背景には投票率向上に加えて、オクトーバーサプライズに対する対策があります。期日前投票者数を増加させて、投票結果に対するオクトーバーサプライズの影響を低下させる狙いがあるのです。言い換えれば、同陣営は期日前投票がオクトーバーサプライズに対して一定の効果を上げるとみているのです。

 上で説明しましたクリントン陣営の選挙戦略の成果が出たのか、すでに全国で2300万人が投票を済ませています。クリントン候補は、集会で期日前投票者数の最高記録を作ろうと呼び掛けています。確かに、私用メール問題を巡るFBI捜査再開は、全体並びに激戦州における支持率に影響を及ぼしていますが、同候補は期日前投票の促進運動によりトランプ候補の猛攻に何とか持ちこたえています。

 ただし、「トランプ候補の応援団」であるフォックスニュースは、クリントン候補の私用メール問題に関するFBI捜査再開のニュースが流れると、早速、中西部ミシガン州、ウィスコンシン州、ミネソタ州、東部ペンシルべニア州、ニューヨーク州、コネチカット州、南部ルイジアナ州及びハワイ州の8つの州において期日前投票をすでに行っていても再投票が可能であると報道しています。上の州の中には、トランプ候補が狙っているミシガン州、ウィスコンシン州、ミネソタ州並びにペンシルベニア州が含まれていますが、実際どの程度の有権者がこの仕組みを利用して再投票を行うかは不透明です。

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