トヨタ包囲網を絞る米国の深謀


Wedge編集部

WEDGE REPORT

ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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「トヨタの品質問題は、豊田章男社長ら幹部が3度の米議会公聴会で陳謝したことで何とか峠を越えた、というのが日本側のもっぱらの見方だろう。だが、これは誤りだ」。米国に駐在する日米自動車問題に詳しいある関係者はこう指摘する。

 フロアマットやアクセルペダルの不具合で大量のリコール(回収・無償修理)を出したトヨタ自動車。一連のリコール台数は世界で1000万台規模と、同社の2009年の世界連結販売台数を優に超える。規模だけでなく、後手後手に回った対応のまずさに「過去最悪のリコール」(米タイム誌)と報じられた。

 主な3つの不具合を、トヨタの技術的な責任の濃淡で振り返ると、昨年10月のフロアマット関連のリコールは、純正品以外のフロアマットを重ねて使った場合にアクセルが戻りにくくなるケースがあるもの。責任の度合いは低いが、米国で死亡事故が発生したため「グレー」と言える。今年1月にリコールしたアクセルペダルが戻りにくくなる問題は、深刻な事故の報告はないが、トヨタ側による材質や構造の検査ミスの疑いもあり、「濃いグレー」。2月に出したプリウスのブレーキの効きが遅れるプログラムミスは制動遅れが0.06秒と軽微で「薄いグレー」だろう。

 技術的にはいずれも「あり得るミス」(他の自動車メーカー幹部)の範囲内だが、「あり得ないのが対応のまずさ」(危機管理の専門家)で、この点では明らかに「クロ」との声が支配的だ。「欠陥はない」と技術的説明に終始する姿勢やトップが表に出ない対応の遅れが、米メディアや米国民の反発に火をつけた。

公聴会の報道の脇に
気になるベタ記事が

 冒頭の関係者は語る。「米ゼネラル・モーターズ(GM)が破綻し、世界一になったトヨタは米国でもシェアを伸ばしていた。米自動車産業の間で不満がくすぶっていたところに、味方のはずの米消費者をも敵に回した。トヨタは、米政府が乗り出しやすい環境を作ってしまった」。

 事実、米ニューヨーク州南部連邦地裁の連邦大陪審がトヨタに対し、関連する書類の提出を命令したほか、米証券取引委員会(SEC)も情報開示が適切か調査中。「リコール隠し」の有無によっては刑事事件に発展しかねないどころか、米各地で賠償総額2000億円を超す集団訴訟も抱える。まさに「トヨタ包囲網」とでも言うべき状況に陥っている。

 それだけではない。米公聴会での章男社長発言が大々的に報じられる片隅で、小さく報道された記事があった。2月24日、米連邦捜査局(FBI)が自動車部品大手のデンソー、矢崎総業、東海理化3社の米国法人に捜索に入ったのだ。

 容疑は「独占禁止法違反」。日欧でも矢崎総業や電線メーカーにワイヤーハーネスの独禁法違反容疑で捜査が入ったが、日欧当局と連携している米司法省の対象は「自動車用電子部品」。トヨタの取引先が狙い撃ちされ、しかも対象製品が異なる捜査に「トヨタの電子制御システムを丸裸にする狙いでは」(国内自動車部品関係者)との見方がくすぶる。

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