WEDGE REPORT

2017年3月13日

»著者プロフィール
閉じる

児玉 博 (こだま・ひろし)

ジャーナリスト

1959年大分県生まれ。早稲田大学卒業。フリーランスジャーナリストとして、大手総合誌、ビジネス誌で活躍。著書に『日本株式会社の顧問弁護士 村瀬二郎の「二つの祖国」(文春新書)など。

 コードナンバー〝APT28〟と識別され、サイバー、その世界で〝FANCY BEAR〟と呼ばれるのがロシアのハッカー集団。

 今回筆者が入手した資料には、こんな記録が残されている。

写真を拡大  米大統領選挙の最中にロシアのハッカー集団がヒラリー・クリントンを支える民主党全国委員会をハッキングした痕跡

 「DNC HACK」
 一般には聞き慣れないが、ここで記されている〝DNC〟とは、米民主党全国委員会の略称。つまり、〝FANCY BEAR〟とも称されるロシアのハッカー集団が米民主党全国委員会に対しハッキングを行ったと記録したものなのである。

 米民主党全国委員会は、4年に1度の民主党の大統領候補を指名する全国大会を主催するだけでなく、政治資金の調達・配分、選挙戦略の立案・実行・調整、広報活動などいわば民主党の〝中枢頭脳〟なのだ。ちなみに、委員長は政党の党首にあたる。

 ヒラリー・クリントンが共和党候補ドナルド・トランプと激戦を繰り広げていたまさにその最中にロシアのハッカー集団によってクリントンを支える中枢がハッキングされたのである。

 先の米大統領選挙においてロシアのハッカー集団によってサイバー攻撃が行われたと米情報機関を統括する国家情報長官室が結論づけたことは周知の事実。この資料は、米情報機関と密接な関係にある民間セキュリティ会社が作成し、日本の情報機関の1つに提出したものだ。

 
 

 大統領選挙期間中、ロシアは直接的なサイバー攻撃の他に、事実上ロシア政府の支配下にあるトロール部隊(ネットによる世論操作)によって、様々な偽情報を流し、世論誘導を図った。大統領選挙のような二者択一を迫られるケースでは、特に二者が拮抗した場合、その心理的な効果は最も有効とされる。ロシアのトロール部隊はこんな情報を流し続けた。

 「ヒラリーの旦那ビルは、あのモニカ(ルインスキー)とよりを戻している」

 「ヒラリーは児童買春組織と深いつながりがある」
 明らかに根も葉もない偽情報の羅列だが、切羽詰まった状況は人間の選択に明らかな影を落とす。サイバー攻撃を含め、ロシアの国家的な情報操作は精緻を極め、他の追随を許さない。

昨年7月、中国の南シナ海での領有権主張が国際仲裁裁判所で退けられた直後にベトナム空港がハッキングされた(写真・AP/AFLO)

 

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る