WEDGE REPORT

2017年3月21日

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 ホワイトハウスで新たな権力闘争が激化している。黒幕と呼ばれるバノン首席戦略官派とコーン国家経済会議委員長らニューヨーク(NY)派の対立だ。トランプ政権が医療保険制度改革の見直しや前政権の盗聴疑惑批判など数々の難題に直面する中、ホワイトハウス中枢の内紛は政権の運営に大きな影を落としている。

“敵の敵は味方”で手を組んだ2人

(iStock)
 

 この2大派閥の対立は米紙ワシントン・ポストによって初めて報じられた(「Inside Trump’s White House, New York moderates spark infighting and suspicion」3月18日)。一方の派閥のボスは大統領の信頼厚い側近で、右派のバノン首席戦略官だ。バノン派には、プリーバス首席補佐官、ミラー上級顧問ら選挙時代からトランプ氏を支え、「イスラム教徒の入国禁止」「メキシコ国境への壁建設」といった同氏の過激な主張を主導してきた面々だ。

 プリーバス首席補佐官は共和党全国委員長だったこともあり、議会共和党主流派との橋渡し的な存在。比較的温厚で調整型の人物で、「アメリカ第一主義」や移民排斥、そして時には人種差別的な発言も厭わないバノン氏とはそりが合わなかった。

 このため政権発足当初はホワイトハウスの司令塔役である自分を無視して大統領と直接話すバノン氏を敵視、この2人の権力争いが際立った。しかしその後、コーン国家経済会議委員長らニューヨークのビジネス界出身グループが大統領に影響力を行使し始めるようになった。

 この一派には、コーン氏の他、同じ金融大手ゴールドマン・サックス出のディナ・パウエル氏、ムニューチン財務長官、ロス商務長官らがいる。トランプ氏の長女のイバンカ氏、夫の上級顧問であるクシュナー氏らも加わり、大きな勢力にのし上がった。財界人を招いての定期的な会合を開いているという。

 トランプ政権のホワイトハウスでは、プリーバス、バノン、クシュナー各氏の3人が地位的には同格。歴代政権では首席補佐官がトップの司令塔となってきたが、トランプ政権では指揮系統が3人に分かれているため、混乱が助長されている。

 しかしこのところのNY派の台頭が著しく、特に経済会議の副委員長のパウエル女史は外交問題でも影響力を拡大。大統領は最近、その手腕を買い、彼女を国家安全保障問題担当の次席補佐官にも任命した。パウエル氏は先週のメルケル首相との会談では、ペンス副大統領をはさんでトランプ大統領から3番目に陣取ったほどだ。

 こうしたNY派の台頭に危機感を深めたのが首席補佐官のプリーバス氏。同氏はホワイトハウス混乱の最大の原因といわれ、近い将来更迭は間違いないとさえ囁かれている。しかもその後任には、NY派の頭領であるコーン氏が最有力されているのだ。

 プリーバス氏はこのため仲が悪かったバノン氏に急接近、NY派の影響力拡大を懸念していたバノン氏と“手打ち”し、予想外の共闘が出来上がることになった。「敵の敵は味方」というこの古典的な離合集散の結果、ホワイトハウスの権力構図も「バノン・プリーバスvsコーン・クシュナー」に変容した格好だ。

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