特別対談企画「出口さんの学び舎」

2017年4月24日

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「大統領選直後の反トランプデモには、パワーがありました」

森本あんりさん(左)、出口治明さん(右)

森本:僕はちょうど、トランプが大統領選で勝った翌日にニューヨークに行ったんです。トランプタワーの向こう側に用事があったので五番街を歩いていたら、もうデモの人でいっぱいでした。日本だったら、プラカードに書かれる文字は印刷された同じようなものですよね。

出口:そういえば、向こうのプラカードは手書きですね?

森本:はい。みんな自分で書いているんです。なんだか読みにくくてわかりにくいんだけど、よく見ると面白いことが書いてあって、日本とは違うなと思いました。

出口:僕の友人も、選挙当日アメリカのオハイオにいました。われわれの知っている人たちが行くのはみんな都市部でヒラリー派なので、結果が出た後はお通夜みたいだったと言っていました。

森本:本当にそうでした。大学関係者の集まりに行ったのですが、みんな真っ青な顔をして「これからどうなるんだろう」という感じでした。ニューヨークはもともとヒラリーのほうが強かったから。

出口:70数パーセントはヒラリーですよね。

森本:もう圧倒的ですからね、反トランプのデモにもパワーがありました。ああいうのを見ると、アメリカ人は「ノー」と言うのが上手だなと思います。

出口:トランプが出てきて以降、しきりに「反知性主義」という言葉が使われるようになりました。森本先生はまさに『反知性主義』というご本を出しておられるわけですが、今日はこのことについて教えていただけますか。

森本:『反知性主義』を書いたのは2年前のことです。新潮社の編集者がやって来て、私が以前に書いた学者向けの本が面白かったので、「一般向けに書き直してほしい」と言われました。忙しいのでとてもそんな時間はないとはじめは断ったんですが、書き始めたら意外に早く書けました。たまたまそれが、日本で反知性主義という言葉とぶつかった。

出口:それが、ものすごく話題になって。

森本:最近増刷した帯には、トランプの写真までついています。最初はなかったものですが。

出口:この帯は注目を集めそうですね。

森本:流行に合わせて売れる本を書こうなんていう気持ちは、全然ありませんでした。そもそも当初はトランプの話もなかったですしね。偶然に重なる偶然で、周りの連中からは「おまえトランプでずいぶん儲けたな」なんて言われて、ちょっと後ろめたいんです(笑)。

「反知性主義は、社会が変わるチャンスかもしれません」

森本:日本で反知性主義というと、「おまえは、知性がないな」と非難する言葉。相手をやっつける言葉として使われます。もちろん、そういう使われ方もまちがいではありませんが、一方で、反知性主義にはアメリカの長い歴史があります。

 アメリカの戦後のマッカーシズムは出口さんもよくご存じだと思いますが、反知性主義というのは、そのころ使われ始めた言葉です。要するに、知性が権力と結びついて自己再生産をしていく。エリートというのは、インテリの連中がいい学校に行き、いい仕事について、いい収入を得るから、子どももいい教育を受けられるんですね。逆に、それに乗っかれない人は、いつまでも上昇できない。下降スパイラルになっていくんです。

出口:上昇スパイラルと下降スパイラルの二極化した悪循環ですね。

森本:ええ。反知性主義は、そういうものを批判しています。トランプもそうですが、権力と知性が手をつないで固定化することに対する反発が起きる。ということは、反知性主義が出てくると、社会が揺さぶられ、新しい価値観に向かうチャンスとなります。トランプは明らかに行き過ぎていますが、歴史的にはそういうこともあるんです。

出口:なるほど。

森本:ですから、社会が変わっていくチャンスかもしれないと思っています。

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