折り紙の科学で
知的な形を作りたい!(前篇)

立体図形、折り紙研究者・三谷 純


高井ジロル (たかい・じろる)  編集ライター

1967年生まれ。北海道大学文学部卒業後、情報誌編集部を経て 、97年からフリー編集ライターに。著書は『Globes 地球儀の世界』(ダイヤモンド社)、『魂を熱くさせる宇宙飛行士100の言葉』(彩図社)など多数。

ACADEMIC ANIMAL 知的探求者たち

“学問玄人”である研究者の方々に話を伺い、学問の醍醐味、楽しさを伝える連載企画。ユニークな研究者、長い時間をかけて壮大な問題に取り組まれている研究者、学界の“星”のような研究者など、さまざまな研究者に、その研究内容や研究の道に入ったきっかけなどを伺います。ビジネス情報誌「月刊 WEDGE」との連動企画。

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世界に誇る日本の折り紙。いまや子どもの遊びにとどまらず、
折りの科学として人工衛星の太陽光パネルや車のエアバッグにも応用される。
そんな奥深い折り紙の科学に見せられた三谷氏がつくるのは、
不思議な幾何学的折り紙。いま、この形に魅せられる人が増えている。

高井ジロル(以下、●印) 先生は、日本でも珍しい折り紙の研究者なんですよね。考案された立体折り紙は、幾何学的で不思議な形だと思いました。僕もご著書に載っていた「5角蛇腹」「8角花瓶」「球体ラッピング8枚羽根」を自分で作ってみたんですが、ぐしゃぐしゃだった紙が最後にぎゅっと収斂して完成するときに、生き物のように感じました。

まるで小龍包のような立体折り紙。なだらかな曲線を含む形状が、1枚の紙で出来ているというから驚き。

三谷純(以下、「——」) 僕が設計した折り紙を実際に折ってみてくださったのですね。ありがとうございます。僕の折り紙作品は、鶴や兜を折る普通の折り紙と違って、計算によって導き出された紙の造形物と言えるかもしれません。三次元コンピュータ・グラフィクス(3DCG)の技術を使って形を設計し、展開図は計算で求めます。

 僕の折り紙の特徴の1つは、最終形に曲面が含まれることなんです。曲面の展開図を頭で考えようとすると難しいのですが、数式で表現できれば後はコンピュータで計算して比較的楽につくることができます。

 先日、自分で作っているところを撮影してyoutubeにアップしてみたんですが、それを見ていただくと、最後の最後にパッと形が仕上がるのがよくわかります(http://www.youtube.com/v/8PrXOm2QS5o&hl)。最終的な形に至るまでは紙に無理をさせることになるんですが、最後は無理なく安定するようになっています。そういうふうに展開図を作っていますから。

三谷純氏

 ●複雑な形がたくさんありますが、展開図の設計は、頭の中で決まるものなんですか?

——自作のソフトを使用して設計しています。基本的には、まず三次元の形をイメージして、そこから展開図をコンピュータに計算させます。試行錯誤していて、たまたまできた面白い形もあれば、イメージして展開図ができたけど、難しすぎて実際には折れなかったとこともありますよ。

 ●どんな形も、1枚の紙から作るということが大切なんですよね?

氏の著書『ふしぎな球体・立体折り紙』(二見書房)。
展開図が付録されており、球体や立体の折り紙が作れるようになっていて面白い

——はい。折り紙と言うからには、1枚の紙で作ることを大前提としています。でも一枚の紙でつくらなければならないというのは大きな制約です。その制約の中で、理論的に制作可能な形を設計しています。例えば、一枚の紙から、複数の立体が隙間なくつながった形を作ることもできます。理論的には、いくらでも複雑な形を作れますが、人間の手がついていけない、などの理由で自ずと限界が決まってしまいます。

 1枚の紙からつくる、という制約は折り紙の特徴でもあって面白い。折った後の形を考えるときには、その展開図が隙間を持たずに、一つのつながった平面にならなくてはいけません。制約が多いほど、その解を導く数学は難しくなってきます。

 展開図には無限のパターンがありますが、その中で実際に作れ、かつ見て美しいものは限られてきます。

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著者

高井ジロル(たかい・じろる)

編集ライター

1967年生まれ。北海道大学文学部卒業後、情報誌編集部を経て 、97年からフリー編集ライターに。著書は『Globes 地球儀の世界』(ダイヤモンド社)、『魂を熱くさせる宇宙飛行士100の言葉』(彩図社)など多数。

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